2羽の渡り鳥・・・最果ての地で出逢う。
北海道、網走。車寅次郎は橋の上でレコードを売っていた。
「さっぱり売れないじゃないか」
「お互い様じゃねえか?・・・何の商売してんだ?」
「私?歌うたってんの」
:
「兄さん何て名前?」
「俺か?俺は葛飾柴又の車寅次郎って言うんだよ」
「車寅次郎・・・じゃ、寅さん・・・いい名前だね。」
寅次郎とリリーは似た境遇の二人だ
お互い親と疎遠で、堅気ではなく、フーテン暮らし。
それゆえ寂しさ、つらさを分かり合える。
しかしそれだけでは無い、境遇もにているけれど、
2人の本質も似たところがある。
香具師、どさまわりの歌手
こういうやわらかい商売をしている二人だが、
金だけをあてにして生きていたり
目先の遊びにおぼれたりもしない
今の自分は間違っている、このままではいけない、
本当は人間として地道に暮らさなければと思っているところだ。
「じゃあ、またどっかで会おう」
「ああ、日本のどっかでな!」
この先本当に何度も2人は出逢う事になる。
ある日、柴又とらやでリリーは寅と再び出逢う
それから寅さんは皆に紹介し、リリーもしばしば遊びに来る。
リリーが来ると、きまって寅の恋愛遍歴の話になる(ファンには嬉しい場面)
「なんだよ恋をするたびって、それじゃ俺が一年中恋してるみたいじゃねえか!」
「な~に言ってんのよ、お兄ちゃん」
「友達が来てるんでしょ今日~、も少し気を使ったらどうなんだよ~」
「寅さんが恋した人ってどんな人だったの?ねえ教えて」
「櫻、しゃべったらただじゃおきませんよ」
「そおねえ・・・あたしもよく覚えてないけど・・・」
「お千代坊でしょ馬鹿だなあ、あれはただの幼馴染じゃないか馬鹿だなあ」
・・・・・っっって何も言ってないのに寅さん自ら全員暴露(^o^)
「いいなあ・・・寅さんっていいねえ・・・」
「別にいい事なんかねえよ。ぶっちゃけた話いつもふられっぱなしなんだから」
「いいじゃない!何百万べんも惚れて、何百万べんもふられてみたいわ」
リリーはとらやの人々とのあたたかいふれあいを心から喜ぶ
その夜、寅さんの部屋に寝るリリー。
物置部屋に寝る寅次郎。
二階の隣合わせの部屋ごしにいつまでもリリーは語りかける
「寅さん聞こえる?、恋がしたいなあ」
ある日の夜中、キャバレーで歌の邪魔をした酔っ払いとケンカをしたリリー
やけになり酔っ払ってとらやにやって来る
「寅さんいる?あたしよ!来ちゃった。誰か~!寅さん起きて~!寅さん!」
寅さんに一緒に飲もうと言う
だが真夜中だし、おいちゃんたちや、近所の手前もあって
「おい、リリー静かにしろよ。ここは堅気の家なんだぜ。」
「寅さんなんにも聞いてくれないじゃないか・・・嫌いだよ!!」
寅さんはこの夜、リリーを受け止めてやれなかったのだ
それからリリーは姿を現さなくなった。
そして寅も旅に行く
自分のいない時にリリーが来たら、面倒を見てやるようにと櫻に告げて・・・
男はつらいよ~寅次郎忘れな草
リリーへの恋は、風呂でひった屁のアブクの様に
はかなく消えてしまった。
櫻は旅立つ寅に言う
「どこかで、リリーさんに会えるといいね」
寅とリリーの物語はこの作品から始まったのだった。
ほかにも、父親の27回忌で皆を笑わせる寅、
ピアノが欲しいという博たちにおもちゃのピアノを買ってきてあげて、
とんでもない気を使わせる寅(世に有名なピアノ騒動)
朝日印刷の労働者の若者の恋を取り持つ寅、
その若者の愛の告白に感動し物真似までしてしまう櫻
あぶくみたいな暮らしから脱却しようと牧場の仕事につく寅
などなど・・・見どころいっぱいの傑作だ。
ところで、
協議の結果、寅さんは上流階級ということになった。
なにが入ってるかわからないカバンしか持っていないが
人を愛する気持と寅を取り巻く人々との愛情において裕福ということだ。
カバンにはきっと今まで惚れた人々に手紙を書く為のアドレス帳があるのでは?
「ああ、お前カバンの中身しらべたろ!!」・・・(¬、¬) あやしい
満男や他の誰か若者が流行歌手になりたいなんて話を聞くと
寅さんは絶対に反対する
「おじさんそれだけは反対だ」
もしかするとそれは寅さんがリリーが歌手で売れなくて
苦労していた事を痛いほどわかっていたからなのかもしれない。
男はつらいよ 寅次郎忘れな草
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コメント
おいちゃん「おらあおどろろろかねえ!
おらあおどろろろろかねえ!」
寅「このね口をフガフガさせてるもうろく爺ィが
俺のおじきでね。
こっちで浴衣着てはれぼったくなってんのが
俺のおばちゃんだ。
まえっツラで口ぱかっと開けてんのが妹のさくら
その向こうでサルガニ合戦の臼みてェな顎
してんのがのが亭主。
その向こうは見た通りタコ!ね!
こちら、俺の友達の
レコード歌手のリリーさん」
この声、このテンポ、渥美さんいいなあ!
みなさんのそれなりのリアクションも捨てがたい
ですよね(^^;)
リリーさんの旦那さん、寿司屋の名前を「清寿司」と
そのまんまつけるところに盲目の夫婦愛を感じます(^^;)
さくらが最後、とらやのみんなに
「リリーさんがね今でもお兄ちゃんの方が好きだって」
って嬉しそうに言ってしまうところにさくらの寅に対する
盲目の兄妹愛を感じます(^^;)
明日からバンコクです。
バンコクでも時々ネットカフェで拝見しますね(^^)
隣同士の部屋で2人が話すシーン
あれそんなに声張って無くても聞こえるので
障子一枚くらいで隔てられているのかもしれませんね
謎だらけのとらやの二階の構造は
何があってもおかしくないですね
おいちゃんの趣味は二階のリフォーム・・・( ̄ー ̄?)
映画評「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」
☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1973年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり