男はつらいよ~寅次郎わが道をゆく~

男はつらいよ

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寅さんと、松竹歌劇団トップスター紅奈々子との恋物語

九州熊本、田の原温泉に滞在する寅さん
千年杉の下で、若い男女がなにやらもめている
失恋男の後藤留吉が、またまた彼女に
別れを切り出されてしまう
留吉はみっともなくもカッとなり、
彼女に罵声を浴びせていた
「青年・・・女にふられた時は、
じっと耐えて、一言も口を利かず、
黙って背中を見せて去るのが・・・
男という物じゃないか?」

「・・・あのう、どちらさんでしょうか?」
「東京は葛飾柴又の車寅次郎、
人呼んでフーテンの寅、
ゆえあってこの宿に滞在しています・・・
夜分にでも話しにいらっしゃい」

「♪しょう~ねん~老いやすぅ~くぅ!学ぅ~成りぃいいがたぁしぃ♪」
寅さんはこの地で、車先生と呼ばれ、崇められていた。
留吉はすっかり寅を尊敬し弟子入り。
ところが寅さんは宿賃を持っていなかったので、手紙で櫻に迎えに来てもらった
櫻は村中の人に先生と呼ばれている寅をあきれてしまう
壁に掛けられた寅の書「反省」も、恥ずかしいので隠すのだった。


「いらっしゃいませ、お団子でございますか?あ、備後屋さん!お利口そうですねえ!」
心を入れ替えて反省し、とらやで働き出す寅さん
それが評判になり、たちまち寅さんに縁談が舞い込んでくる
タコ社長の取引先の、吉田活版のよっちゃんだ。
縁談もとんとん拍子で、寅はついに地道な暮らしへと進んで行くかに思えた
悪いけど、こんな時にマドンナが登場します。
「あ!さくら~~!」
えらく慌てて、嵐の様に現れたその女性は
櫻の同級生で、今は松竹歌劇団(SKD)の花形スター紅奈々子だ。
奈々子はもっと早く櫻に会いに来るつもりが、トラブルで遅れてしまい
開演時間が迫っていたので、すぐさま行かなければならなかった。
「お兄ちゃんじゃない?」と寅に抱きつく奈々子
「やだやだ昔と同じ顔してる!ねえ私の事覚えてる?」
「覚えてる、覚えてるよ」
「本当?うれしい!」
奈々子はレビューの時間があるので、団子買っただけで走って行ってしまった。
当然、寅さんも奈々子にくっついて浅草まで行ってしまった。
奈々子のステージを見た寅さんは、奈々子にもSKDにも夢中になってしまうのだった。
・・・シリーズ中一番結婚に近づいたんだけど・・・惜しかったぞ!よっちゃん!


再びとらやに遊びに来た奈々子は、櫻と学生時代の昔話に花を咲かせる
奈々子は昔から、アイドルだった櫻に憧れ、やきもちを焼いていた
そんな櫻が博のようなまずしい職工と結ばれた事に、驚きはしたものの、
心から櫻の事をうらやましく思う。
櫻の方もまた、奈々子の華やかな人生をうらやましく思う。
奈々子の夢はスターになる事。周りの人にも必ず将来スターになると思われていた程で
自分もそうなりたいと願って、そしてその通りに生きてきた。
素晴らしい人生だと櫻は言う。
あともう一人そういう人がその場にいた。寅さんだ。
寅さんの夢はテキヤになる事。周りの人も遊び人にしかならないと思われていた程で
そして、その通りになっちゃったのだ。
そんな訳で奈々子と寅は理想の生き方を貫いているという事になる。
だけど奈々子は今、結婚をするか踊りを続けるかで悩んでいた。
それで櫻に相談に来たのだ。


奈々子は悩んだ末、10年付き合った彼との結婚を諦め、踊りを続ける決心をした。
その場で奈々子は泣き崩れてしまう
「私から踊りを取ったら何が残るの?結婚なんかできる訳ないじゃない!」
「分かるよ、あんたの気持はよく分かる」
「恋なんかするんじゃなかった・・・どうして私なんかに惚れたんだろうアイツ
好きだったら何でそっとしておいてくれないのさ・・・どうしてこんなに苦しめるのさ・・」

「もう忘れろい、あんたには踊りがあるじゃねえか」
「大した踊りじゃないよ」
「そんな事ないよ、あんたの踊りがどんなに素晴らしいか、あんたには分かんないだろうけども
大勢の人があんたの踊りを見て、うっとりして、
苦しい思いや、つらい思いを忘れようとするんだい
踊りを続けろよ、な、そのうちその男も分かってくれるよ」

朝まで一緒に飲んで欲しいと、寅に頼む奈々子・・・
外を見ると、奈々子の恋人、宮田隆が立っていた
奈々子は雨の中、隆の元に駆け出し、二人は抱きしめあった。
寅さんは、奈々子が幸せになればそれでいいと旅にでる
「ただ・・・踊りを辞めたりしたら後悔するんじゃねえかな。俺だったらそんな事させねえ」

松竹歌劇団「夏の踊り」初日。紅奈々子の引退の日
客席には、旅に出たはずの寅さんが、奈々子の最後の歌を、ひっそりと見届けていた。



男はつらいよ~寅次郎わが道をゆく~
寅さんは確かに、最初は奈々子に一目ぼれだったが
次第に彼女の歌、踊り、芸術に、心から惹かれていったのではないだろうか
彼女にふられた事よりも、彼女が舞台を降りる決心をした事の方が
寅さんには辛かったのではないだろうか
同じ”わが道をゆく”者として。



ところで

この作品の見どころの一つは
佐山俊二さん演じる備後屋と寅さんのバトル。
計3回対峙します


冒頭の夢、寅さんは実は宇宙人だった!!
実際の姿はギンギラギンの背広とダボシャツ
う~~ん、なくもない話だ・・・( ̄_ ̄|||)


ちなみに倍賞千恵子さんは松竹歌劇団の出身です


歌劇団というのは
トップスターの引退公演というのが最大の目玉
いつ、どんなタイミングで引退するのが、一番輝かしいかどうか
というのが歌劇団トップスターの最大の使命
紅奈々子さんも素晴らしかった。
その辺の事もしっかりと物語になっている。
やっぱり山田監督は凄い!


僕も渥美清さん達の芸にうっとりして、苦しい事や辛い事を忘れよう ( ̄▽ ̄*)ノ”







コメント

  1. 彰(あきら) より:

    いいアイデアがあります。
    奈々子がSKDの舞台を続けて
    隆が照明係の仕事をやめればいいのです。
    隆が家庭に入って『主夫』をする。
    もし隆が嫌がるなら奈々子だって嫌がれば
    いいのだと思うんです。

    このままだと数年以内に、
    リリーのように家庭を捨て、
    歌をもう一度選ぶハメになりそうです。
    もうSKDには戻れないでしょうからテレビかな…。

    倍賞さんなんか2回結婚していますが、
    女優さんは当たり前のように続けていますよね。

    隆は何を考えているんでしょう??
    奈々子のどんなところが気に入って
    結婚するのでしょうか…。

    だから寅の言うことはもっともですね。

    最も奈々子が引退する理由は、
    表向きは結婚なんだけど、実は
    体力と気力の限界を感じて、
    ということでしたら
    納得で~す
    これもいかにも巷ではありそうですね(^^;)

  2. RUU より:

    「紅奈々子ダンススクール」
    を設立してますよ今頃
    これもよいパターンですね

    場所は墨田区向島
    たまに寅さんが源公をつれて見学にきます
    「奈々ちゃん、遊びに来たい」
    「あら坊や、なんて名前?」
    「名前なんてないよ、源ちゃんだこいつは」

  3. 映画評「男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく」

    ☆☆☆★(7点/10点満点中)
    1978年日本映画 監督・山田洋次
    ネタバレあり

  4. Ernestnach より:
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