男はつらいよ~純情篇

男はつらいよ

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独立への思いがつのる程、郷愁にかられる寅次郎。

長崎港で寅は赤子をおぶった一人の女(絹代)と出会う
「早いトコ暖かい部屋に入った方がいいぜ、赤ん坊風邪ひくよ。」
「・・・あの、お金貸してもらえんとでしょうか・・・
今晩泊まるお金が足らんとです」

その女性は夫の遊び癖からにげて実家に帰るところだった
寅次郎は哀れに思い、部屋を借りてあげた。
「泊めてくれて・・・何もお礼できんし・・・
子供がおっけん電気ば消してください」

「あんた・・・そんな気持でこの俺に金を・・・
そうだったのかい・・・」
「俺にはちょうどあんたと同じ年頃の妹がいるんだよ。
その妹が行きずりの旅の男にたかだか2千円位の宿賃でよ、
妹の体を何とかしてえなんて気持を起こしたとしたら、
俺はその男を殺すよ・・・あんたのおとっつあんだって同じ気持だよ」

・・・寅さんならではのダンディズムだと言う人もいるが、
私はそうは思わない。この場合むしろ、
寅さんと逆の行動をとる人の方が相当頭のおかしな人だと思う

絹代の実家に行くと、父親は帰れと叱る
辛い事があっても故郷に頼るな。その位の覚悟を持てと・・・
それは、寅次郎にも言える言葉だった。


一方とらやではおばちゃんの遠縁の夕子さんが
亭主と別居して二階に下宿していた
この夕子さんが物凄い美人。おいちゃんがおめかしする程だ。
悪いけど、こういう時に限って必ずあのお方は帰ってきます。
おいちゃんおばちゃんは必死に夕子に会わせまいとするが、
この二人にそういった能力はなく挙動不審なだけ。
「なんかおかしいよ、え!俺が帰ると具合の悪いことでも
あるんじゃねえのかい?だったらはっきり言ってくれよ」

らちがあかず博に聞くと、それは兄さんの被害妄想だと言われるが
寅さん「被害妄想」を英語だと思い博にからかわれていると判断。
「さっきは悪かった、だけどお前の誤解だぜ」とおいちゃんがなだめても
「5階でも6階でもいいよ、どうせ俺は被害妄想だからよ」
ともう完全にへそを曲げる。
とうとうおいちゃんが、2階を人に貸している事を打ち明けると、
「夏になったら鳴きながら、必ず帰ってくるあのつばくろさえも、
何かを境にパッタリ姿を見せなくなる事もあるんだぜ・・・
俺はもう二度とここのうちには帰ってこねえよ。本当だぜ。」

と出て行ってしまう・・・が、このタイミングで夕子とすれ違う
美人の夕子さんに挨拶されて、当然寅さん一目惚れ
だけど啖呵を切っているので出て行かなくてはならない・・・
夕子さんのいるとらやに戻りたい、しかし引けない・・・
そこに天の助け、櫻がやってくる
「お兄ちゃん、いつ帰ってきたの」
「今!たった今帰ってきた!ただいま!」
「お・・・おか・・おか・・おかえりい」
唖然とするおいちゃん達をよそに早速夕子と帝釈天にお参りする寅だった。


ある朝、夕子さんが心労から寝込んでしまう
慌てて寅さん電話で医者を呼ぶ
「何い!忙しい?それでも医者か!
夕子さんがペストかコレラになったらどうするんだ!え?
夕子さんてのは病人の名だよ!何い?
女に決まってるじゃないかまったく!
何い!年はいくつ位だ?ふざけるなこのスケベ医者!!」

日本一スケベな医者は、なんとか来てくれた。
「よく診てくれたんでしょうね」
「見た見た。じっくり見た・・・しっかし美人だねえ」
「何い!!!いったいドコ見てたんだ!!」
「どこったって・・・おっぱい・・・」
「ああああああ」
寅さんに首を絞められてしまうスケベ医者だった
この件以後、この医者は寅さんに徹底的にマークされる。


寅さんは幸せの絶頂、
夕子さんが風呂にでも入ろうもんなら、もうそわそわそわそわ
とうとう恋の病で寝込んでしまう
おいちゃんに電話で呼ばれたあのスケベ医者
待ってましたとばかりに、突っ走ってとらやにすっ飛んでくる
が・・・病人が夕子でなく寅だと知り、がっかりして診ずして帰る
夕子は、寅が自分に好意を持っている事に気がつくのだった。
・・・これが正常な感覚。他のマドンナの方達が鈍感なだけ
「寅さん私、困ってるの・・・ある人が私にとても好意を寄せてくださるの
私嬉しいんだけど、どうしてもその気持をお受けする訳には・・・」

「よく分かりますよ。俺ははなっからピンときてたんだ。
諦めろとスパッと言ってやりゃいいんだ、その馬鹿に!
よし!俺が言って来ましょう!大丈夫!イヤ大丈夫!」

夕子は誠実に寅の好意に答えられないと、面と向ってつたえる
なかなかできる事ではない。立派な行為だ。寅次郎ファンの
私にとっては夕子の寅さんへの誠実な行動がとても嬉しかった。
けど少し遠まわしすぎた為、
寅さんは勘違いして、マークしていた、あのスケベ医者の所に乗り込む
「なんだい君?何しに来た?」  (喫煙しながら診察中!!)
「一言だけ言いにきたぜ・・・諦めてもらいます」
寅は”言ってやった”みたいな顔して出て行くが
スケベ医者はほぼノーリアクション、もう相手にもしてない
それより目の前の患者・・・の性別の方が重大関心事。


夕子の夫が迎えに来て失恋した寅さん
柴又駅で見送る櫻
「櫻・・・覚えてるかい、この駅でよ。
俺が16の時に親父と喧嘩して家出したろ・・・」

「なんだかお兄ちゃんと別れるのが辛くて
どこまでも追っかけてったんじゃない?私」

「そおよ、追っ払っても追っ払ってもよ、
お前よちよちくっついて来るだろ、俺困っちゃったよ。
でも改札まできたら諦めて、これ餞別よって・・・
電車乗ってそれ開けたら真っ赤なおはじきが入ってやがんの
俺笑っちゃったよ」

櫻は寅に自分のマフラーを巻いてやる。
「あのねお兄ちゃん。辛いことがあったらいつでも帰っておいでね」
「そのことだけどよ。そんな考えだから俺はいつまでも一人前に・・・
故郷ってやつはよ・・・故郷ってやつはよ・・・」

ドアが締まり、走り出す電車・・・
「え!?何ていったの!?」
櫻が追いかけるが電車は兄を乗せ見えなくなって行く・・・
男はつらいよの歴史に残る名場面だ。
私の友人はこのシーンを「赤いマフラーの別れ」と名付けている。


男はつらいよ~純情篇
一本立ちへの思い。故郷への思い。
妹への思い。そして恋・・・
車寅次郎は人よりもより多くの悩みを抱える純情な人間なのである



ところで、
博さんよ、重大な事は決して寅に相談してはならないと
第一作で思い知ってるはずだろ。
独立して会社設立なんて大事な事を・・・( ̄  ̄;)



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コメント

  1. 彰(あきら) より:

    博は社員、職人、技術者、としては有能だけれども
    会社経営は意外に下手そう…。
    さくらにはなんとなく
    それが分かっていたような気がします。
    会社経営者に必要な『割り切り、冷徹、融通、』
    あたりが彼は出来なさそうですね。
    さくらは偉い!
    融資を断ったひょう一郎さんえらい!

    あの、『ふるさとの川 ― 江戸川 ― 』
    はやはりNHKでしょうか?
    もし民放だとしたら、勇気あるスポンサーの名を
    知りたいです(^^;)

    おばちゃん「私の従兄弟の嫁いった先の主人の姪の夕子さん」
    って言うのにNGをかなり出したのではないか
    とつい思ってしまいます(^^;)

    タコ社長の長男さああん、次男さーん、
    何があったか知らないが
    いいかげんはやく工場へ帰ってきてくれ~、
    末っ子の「ミー坊」もおぉぉ…(TT)




  2. RUU より:

    若い従業員が辞める事で悩んでいた時
    「この工場にいる事がはたして幸せなのかどうか・・・」
    と悩んでしまう博さん
    真っ先に退職金の心配する梅太郎
    どちらが経営者に向いてるかは一目瞭然ですね
    ひょう一郎さんには
    自分の息子、博のそんな所が分かっていて
    あえて融資を断わったのでしょうね
    だった金は持ってるはずだもん
    それとも毅兄さんの反対にあったかな

    タコ社長の長男、次男は
    第二工場を任されているんです
    だって
    「ここが~第一工場、冷房を入れる予定です」
    って青年に言ってたので
    きっと第二工場があるのです
    四つ木あたりに・・・
    ある訳ないね! ← リリー風に。

  3. 映画評「男はつらいよ 純情編」

    ☆☆☆★(7点/10点満点中)
    1971年日本映画 監督・山田洋次
    ネタバレあり

  4. 男はつらいよ 純情篇 (第6作)

    公開日・1971年1月15日 上映時間・1時間29分 観客動員数・85万2千人 主なロケ地・長崎県五島列島福江島 マドンナ・若尾文子 (あらすじ) 長崎で出戻り女とその父の愛情あるやりとりを聞いた寅さんは、故郷の柴又が恋しくなった。その頃とらやでは、遠い..

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