寅さん、地道な労働に目覚める。
不吉な夢を見て心配になった寅さん
上野から電話をかけると、案の定、
おいちゃんが死にかけているという
実はこれはおいちゃんたちの冗談だが。
すっかり信じた寅さんが駆けつけると
おいちゃんが奥で横たわっていた
(実は暑さでまいって寝てるだけ)
「おいちゃん!俺だよ!!分かるかい?
寅だよ、おいちゃん・・・俺だよ・・・
甥の寅次郎だよ・・・」
「あ・・・ああ~~」
おいちゃんは返事も出来ず、うなされる
(寝ぼけているだけ)
「ああ・・・もう口も利けねえのかい・・・虫の知らせってのはあるもんだなあ
櫻、おめえ一人に気もまして悪かったな、あんちゃん帰って来たからもう心配ねえよ
それにしてもおばちゃん、まだ何にもしちゃいねえんだろ?」
「何にもって?」
「もう安心しなよ、俺は帰る道々打つべき所にはちゃ~んと手を打ってきたからな」
「おい、寅さん、今なんつったんだい?」 ← おいちゃん起きました
「いや、俺は帰る道々・・・あれえ!!!おいちゃん口利けるのか???」
「当たりめえよ!!」
「ははは、あのねお兄ちゃん、おいちゃん病気でも何でもないのよ」
「だって、おばちゃん電話で言ったじゃねえかよ!」
「冗談だよ~」
「おい!打つ手は打ったってのはどんな事なんだい?」
「決まってるじゃねえか・・・おいちゃんダメだって聞いたからよ・・・」
その時、寅さんから竜造が危ないと聞いて、御前様はじめ近所の皆が駆けつけてきた
だが、ピンピンしている竜造を見て、みなキョトン・・・
そんな中、極めつけにあの業者が到着する
「ごめん下さい、この度はご愁傷様です、葬儀屋でございます」
「あ、ご苦労さん!葬儀屋さん?あ、そう・・・今日はいいな~うん」
「いい・・・と申しますと?」
「帰ってくれ帰って!死んだのはこのワシだ!!馬鹿!!!」
その夜、大恥をかいたおいちゃんと、嘘をつかれた寅さんとで大喧嘩
「柴又中大笑いだよ、あんな事されちゃ!!」
「仕方がねえだろったく!おいちゃんが死にでもしなけりゃね、俺は
恩返しって物ができねえんだよ!俺が取り仕切って、さすがとらやの旦那さんの葬式だ
立派な葬式だったと、人に羨ましがられるような葬式を出してえなと思ってたのよ!」
「櫻!!ひも持って来い!!ひも!!
死んでやるよ、そんなに死んでもらいたきゃ本当に俺は死んでやらあ!!!」
そう言い放って首を吊るおいちゃんだが、ひもが細くてちぎれて落ちてしまう
「馬鹿だねえ!この人は、何してんだよ馬鹿だねえ!!」
「馬鹿だよ、どうせ俺は馬鹿だよ、どうせ俺は寅の血続きだからな」
「何ぃ!!」
「何じゃねえや、テメエの面なんか見るより死んだ方が幸せなんだ!!」
「もういっぺん言ってみろい!!」
「ようし!何遍でも言ってやらあ!テメエの面見るより死んだ方がましだってんだ!」
「よし!!ひもなんかいらないよ、俺がこの手で締めてやるよ!!!」
もう手がつけられない状況だが、ここは櫻が上手に寅さんをなだめた。
それからと言うもの、毎日ブラブラして、働いている周りの人達をからかったり
しながら過ごしている寅さん、そこへ、昔世話になった北海道の政吉親分が危篤という
知らせが入ってくる。寅はすぐさま駆けつけようとするが、お金がないので
方々工面に行く。だが全て断わられる。結局、櫻に借りるしかなかった。
櫻は働きもせず、義理ごとばかり格好をつけようとする兄に、
これを機になんとかまともになってもらおうと、精一杯心からの説教で言って聞かす
「額に汗して、油まみれになって働く人と、いい格好してブラブラしてる人と
どっちが偉いと思うの!お兄ちゃんはそんな事が分からないほど頭が悪いの?
地道に働くっていう事は尊い事なのよ!お兄ちゃん自分の年考えた事ある?
あと5年か10年経ってきっと後悔するわよ!!その時になってからではね
取り返しがつかないのよ!ああ馬鹿だったなと思っても、もう遅いのよ!」
そんな言葉が効いているのかいないのか、借りたお金で、いそいそと北海道に向った。
寅次郎達が北海道へ行って、目にしたもの、それは
昔、隆盛を極めた政吉親分の孤独で哀れな最期だった。彼は昔から家庭をかえりみず
派手な暮らしをしていたのだろう、その報いか、家族一人も面会にはこず
最期に会いたいと願った、妾の子にも結局会ってはもらえなかった。
政吉のその姿は、北海道に来る前に寅次郎が受けた櫻の言葉そのものだった。
「額に汗して、油まみれになって働く事の尊さ」寅次郎はそれを痛烈に思い知った。
寅さんはすっかり改心し、柴又で明日から地道に働くという。
櫻も自分の思いが通じたとあって大喜び、皆で寅の仕事先を探す事に。
条件はただ一つ、「額に汗して、油まみれになって働く」仕事だ。
・おいちゃん案 <とらやで働く>
おいちゃん達の働きぶりからして、汗と油とは無縁で堕落しているのでダメ
・櫻案 <寿司職人>
粋だとかいなせという世界からは、縁を切りたいのでダメ
・おいちゃん案 <天婦羅屋>
天婦羅が嫌いなのでダメ
・おばちゃん案 <風呂屋のかまたき>
釜だけ焚いているならいいが、繁忙時にやむなくさんすけさんをする事もあり
その時に女湯で、若い芸者とかの背中を流したりしたら、鼻歌の一つも唄ってしまう
そんな事は地道な暮らしとは言えないのでダメ
結局、裏の朝日印刷で職工として働く事になった。
というかどれも、長年の下積み修行が必要な職業なんですけどね ( ̄~ ̄;)
労働初日、白いシャツにオーバーオール姿でいざ出勤 ← 労働っつうとこの格好
「じゃ、これから労働に行って来るからな」
と言っておいちゃんおばちゃんに労働のポーズでやる気をアピール
「あ、おばちゃん、俺なあ、帰ってきたらすぐ風呂入るから、風呂沸かしといてくれ
なにしろ労働してくるからな」
「あいよ」
「じゃ行って来る。あそれからねえ、風呂上がったら冷えたビール飲むからな
ビール冷やしといてくれ、なにしろ労働してくるからな」
「わかったよ・・・」
「あそれからもう一つ、できたら按摩よんどいてくれるか、
ちょっと労働して筋肉もみほぐすからな」
「・・・あいよ」
「おいちゃん、地道な暮らしってのはいいな」
おいちゃんおばちゃん呆れる中、再び労働のポーズを決め、やっと仕事に向った
しかしこんな男が過酷な労働が務まる訳がなく、朝日印刷をこ一時間で解雇
そのあと福寿司、天婦羅屋、菊の湯とまわるが、どこにも雇ってもらえず
寅さんは矢切の渡しの船でふて寝。すると船が動き出し浦安にたどり着いた。
寅さんは浦安の地で、おかみと娘二人暮らしの豆腐屋で住み込みで働いていた
豆腐作りから売り子まで、人が変わったように実にてきぱきと毎日仕事をこなしていた
なにが寅をそこまで変えたのか、答えはかんたん娘の節子に惚れていたからだ
しかも節子から「ずっとこの店で働いてほしい」なんて月明かりの下で
言われたもんだから、寅さんプロポーズと勘違いしすっかりその気になっていた
結婚、仕事と、うまくいきそうで寅さんは電話で櫻に報告、心から喜んでいた
でもそれは寅さんの勘違いで、節子は恋人との結婚の話が進んでいて
母一人になってしまう豆腐屋を任せられる従業員を探していただけだったのだ。
節子は寅さんの気持に気付いていたにもかかわらず、自分が結婚したい為に
人の真心を利用したのだ。僕はこの節子が本当に許せない。
寅さんがずっと働いてくれる事になり歓迎会が催された夜
そこに節子の婚約者もやってくる。なにも知らないのは寅さんだけ
唖然としていると、節子とその男が結婚すると聞かされる。
「何も知らなかったからね。節っちゃんも言ってくれなかったし、三枚目だな僕は」
「あたし店つぶすの嫌で反対してたから、言いにくかったんだよ」
「いいんだいいんだそういう事は、本当におめでとう」 ← 寅さん辛かろうに・・・
「ねえ寅さん、本当にずっといてくれる?この店に」 ← これ許せなくない?(▼▼メ)
「ええ、ずっと居てくれますよ、心配いりませんよ」
「なにねえ、そのうちあたしがね、いい人みつけてやるからね
どんなタイプがいいんだい?寅さんは?」
「そうねえ、やっぱりおかみさんみたいな人がいいな」
「嫌だよ!この人は!!ハハハハハ」
・・・この状況なのに、皆に気遣い冗談で場を盛り上げる。本当に凄い事です
こんな素晴らしい人はこの豆腐屋にはもったいないね ( ̄  ̄メ)
翌朝、寅さんは浦安から姿を消していた。
男はつらいよ~望郷篇~
「やっぱり・・・地道な暮らしは、無理だったよ櫻・・・」
そう言って涙を流した寅さん。
それでも最後は笑って櫻の幸せを祈って旅に出る
旅先からはがきで、節子の幸せまでも祈る寅さんだった。
ところで、
寅さんのアイスキャンディーの食べ方が、実に粋です (^_^)
山田監督はSLが大好き。それがよく分かる作品です
櫻さんの兄顔負けのブラックジョークも飛び出します
「とらやさ~ん、いないの~みんな死んじゃったの?」
この頃の作品では、山田監督はなぜか、
ラストシーンで寅さんの舎弟の登にクソをさせます ( ̄ー ̄?)
コメント
つねさん語録 №5
本名:車つね。
寅さんの叔母。我らがくるまやのおばちゃん。
キップはいいが、涙もろくて心配性。超がつくほど現実主義の彼女は
柴又の涙と笑いのポイントゲッター。
冒頭の夢と現実の繋ぎで、倍賞さんと谷よしのさんの「お客さん」
という声が絡んでいるのがたまりません(^^)
テンポがよくて勢いがあって、起伏があって、
渥美さんも森川さんも生き生きしていて大好きな作品です。
山田監督も勢いで作ったって何かに書いておられましたが、
ほんとうにこの作品には「冴え」を感じますね。
ただ、確かにこの「望郷篇」はキツイ失恋ですよね。
何も知らない節子さんの恋人は「都合がよかった」なんて
言っちゃうし…。
あの場での笑いながらも動揺している寅の態度見てれば
さすがにあそこではもう節子さんだって
うすうす分かるはずなんですが、
そこは、愛する二人には何も見えなかった…ということ
かもしれませんね。
節子さんも、うすうす分かっていてもこんな「おいしい話」は
逃したくなかったのかもしれません。人の心の残酷さが
見え隠れしているようです。
長山藍子さんはテレビ版でさくらを演じた人なので、
もっと寅の密かな気持ちをちゃんと分かってあげれる
マドンナをさせてあげたかったですね。
ちょっと長山さんもあの役じゃちょっと可哀想です。
彰さん
コメントありがとうございます
政吉親分の妾の子
SL機関士役の役者さんは
12作「私の寅さん」の
りつ子の恩師役の人の
次男だそうですよ
僕は最近知りました。
長山藍子さんと
渥美清さんが
撮影の合間に2人でおしゃべりを
している時、長山さんが
なにげなく草を振っていて
それを山田監督がみてて
「その感じいい」と思い
あの月夜のシーンで
節子が草を水面にちょんちょん
しているんだそうですよ
んん!!??
草ちょんちょんしてたの
寅さんの方だったかな?
2人ともだったかな?
まあどっちでもいいですね(^_^;)
そうそう、NHKBS2でしたっけ。
月夜のシーンのエピソード、僕も印象に残っています。
長山さんは久しぶりにお兄ちゃん(渥美さん)とふたりで
撮影の合間に話ができてとても懐かしく楽しかったって
言ってましたね。
なんだか二人のつながりの深さが伝わるいいエピソードですよね。
それはそうとRUUさん、松山政路(松山省二)さんが
あの河原崎国太郎さんの息子さんだったんですねえ~。
知りませんでした。
と、いうことはお兄さんの松山英太郎さんも同じく息子さん
なんですね。なるほど。
たぶん本名がみなさん「松山」さんなんでしょうね(^^)
彰さん
コメントありがとうございます
長山藍子さんホントに
いい裏話を話してくれましたね
他の出演者の人も
もっと教えてくれたらいいですね
「望郷篇」というと真っ先に浦安を思い出すんですが、
意外と浦安のシーンって短いんですよね。
それだけインパクトがあったということなんでしょうね。
そういえば、
浦安のロケ地(節っちゃんの家のすぐ近く)に
とても古い豆腐屋がありました。
「男はつらいよ」には登場してませんが、
ドラマ等の撮影によく使われてるそうです♪
小寅さん
コメントありがとうございます
そういわれてみれば
浦安のシーンは少しですね
古い豆腐屋さん・・・
実際にその地を歩いた
小寅さんならではの情報です
「望郷篇」は
鉄道マニアの方達にも
見る人がいると聞きました
SLが出まくりですからね~
寅さんは「止めろ」
と言い放ってましたが (^_^;)