白くなく、紫でなくうす紅の、寅に哀しきあじさいの花
葵まつりでにぎわう京都の加茂川
一人の老人の下駄のはなおが切れてしまった。
「おい、爺さんどうした?はなお切れちゃったか、
ほれかしてみな」
通りかかった寅さんが親切に直してあげる。
「爺さん、若いとき何やってたんだ?」
「私は焼物師や」
「へえ、そりゃ大変な仕事だね、薪割ったり
泥こねたりなあ、でももう今は楽隠居だ」
「今でも働いてます」
「その年で?なんだいせがれ楽させてくれないのか?
困ったもんだな」
「そんな事ではないねや、
な~んて言うたらええかいなあこれ・・・
なかなかええ茶碗が焼けんのでなあ、この年になっても・・・」
「えらい!うちの年寄りに聞かしてやりてえよ今の言葉、
いや団子屋の職人やってんだけどね、全然その向上心てのがないんだから
、年々団子作んのまずくなってるの、味が」 ← 食ったの見た事ないけどなあ
寅さんは下駄も買ってもらえない哀れな老人と思いご馳走するが
もう少し話がしたいと爺さんが言い出し、お返しにと寅さんをお店に案内する。
行った先はなんと、先斗町の立派な御茶屋さん
爺さんは当代屈指の陶芸家で人間国宝の加納作次郎だったのだ。
酔いつぶれた寅さん。目を覚ますと、そこは加納邸。
そこで女中をしていたかがりと出会う。
かがりは、丹後の出身で、亭主と死に別れ、
娘を丹後に残し、ここで女中の仕事をしていた。
寅さんはおとなしくて、口数の少ないかがりが気になっていた。
数日後、寅さんは再び加納邸に、お礼にとみんなに下駄を持ってくる。
かがりは思いがけない贈り物を喜んでいた。
そこに東京から来た女学生の一行が加納先生の仕事場を見学したいとやって来た。
何故か寅さんが見学を了承する ← 超ラッキーな学生さん達
加納作次郎が戻ると、その女学生達が記念撮影をしていた。
「さて、皆さん、この方が有名な加納作次郎先生。ね、ささ一緒に写真取っちゃおう!ね」
加納先生は状況が把握できずに寅のされるがまま
「はい取りますよ~ダメだよ先生~そんなうんこ食べた見たいな顔してたんじゃさあ~
もっと愛嬌だして、にっこり笑って、歯ぁ出して、歯ぁ出して、歯ぁ出して!」
寅の勢いにされるがままに、加納先生は”にた~~”っと笑顔を作るのだった。
そんな、ありえない光景を始めてみたかがり達は台所で笑っていた・・・・
加納先生の弟子で、かがりの婚約者の蒲原がやって来た。
蒲原は、資産家の娘と結婚し、美濃に仕事場を開くと言う、
かがりにしてみれば一方的に婚約を解消されたのだが、蒲原の為を思い身を引く。
しかし加納先生はそれが気に入らなかった。蒲原を追い返す。
そして、幸せになる事に全身でぶつかっていかないかがりに説教をする。
かがりの幸せを思っての事だったが、かがりは荷物をまとめて丹後に帰ってしまう。
加納先生は言い過ぎたと後悔していた。
そんな中、寅さんも旅に出るという。
加納先生は世話になったお礼にと、なんと自分の力作の打薬窯変三彩碗を渡す。
丹後に行くことがあったら、かがりに会ってやって欲しいと・・・
丹後半島、伊根の舟屋。寅さんはかがりに会いにやってくる。
「誰を恨むって訳にはいかねえんだよね、こういう事は
そりゃあ、こっちが惚れてる分、むこうもこっちに惚れてくれりゃ
世の中に失恋なんて無くなっちゃうもんな、そうはいかなんだね」
「もういいの。済んでしもた事は、くよくよ考えへんたちやから・・・見かけによらず。」
「苦労が身について、臆病になってしもたんやねえ。先生にそういうて叱られた」
「けえ!偉そうに!調子のいい事言ってあの爺さん。かがりさんにちょっと惚れてんじゃねえのか」
「アホな事言うて・・・」
寅さんは帰ろうとするが、船の最終便はもうでてしまっていた。
その日はしかたなく、かがりの家に泊まることになった。
静かな夜にかがりと寅さんは二人きり・・・
寅さんは妙にかがりの色気が気になってしまい、酒を飲んでもちっとも酔えない。
布団に入っていると、かがりが部屋に入ってくる
「寅さん・・・もう寝たの・・・」
寅さんは狸寝入りをしてごまかしてしまった。
かがりは寅さんに惚れ、寅さんはその女心を受け止めてやれなかったのだった。
翌朝、船を見送るかがり
「寅さん・・・もう会えないのね・・・」
「いや・・・ほら風がな、風がまた丹後の方に吹いてくる事もあらあな・・・」
とらやに戻った寅さん、恋煩いはレベル8(洗濯物を被ったまま町を徘徊する程の危険な状態)
食事を運んでいった満男に
「満男・・・お前もいつか恋をするんだな・・・かわいそうに・・・ああ丹後か・・・」
満男は気味悪がって逃げ出し、皆に報告する
皆心配する。謎の鍵のキーワードは「たんご」
たこ社長は女とタンゴを踊ったのだと確信。おばちゃんとダンスを踊る。皆は大笑い。
「少し静かにして頂けませんか?二階に病人が寝ている事を、心の隅にとめておいて貰いたい」
そう寅に怒られた皆は、反省してひそひそと会話をする。するとまた
「静かにしてくれとは言いましたよ。しかしそんなひそひそ声でしゃべられたんじゃねえ
まるで俺は凶悪犯人じゃないか。」
翌日、かがりさんが友達と二人でとらやにやってくる。
しかし寅とかがりはお互い緊張してしまい、話す事もできない。
・・・この時に2人は加納作次郎の釜場で出会ったという話になるが、
櫻はちっとも驚かずにその話をスルー。加納ファンじゃなかったのか ( ̄ー ̄?)…..??
ろくに話も出来ずに帰ったが、かがりは寅に、つけ文を渡していた
~鎌倉のあじさい寺で日曜午後一時、待っています~
寅さんが女性からつけ文をもらうのは初めての事だ。寅はガタガタと震えだす。
「どうしたの?青い顔して」
「落ち着けよ・・・鎌倉どっち?!」
「鎌倉?」
「鎌倉どっち?!」
「鎌倉幕府の鎌倉かい?」
「しらねえよそんな事!!鎌倉どっちなんだよ!!!」
寅は鎌倉に向って一心不乱に歩き出す
「歩いていくのかい!!遠いんだよ!!!」
異常を察知した博が何とか寅を保護。
鎮静剤を打たれて何とか落ち着いた ← 寅に注射は×
だが今度は満男に、日曜が早く繰り上がるようにしろと要求するのだった。
そして日曜日
寅さんはデートが心細くなり、満男を連れていってしまう
肝心な時に、満男とばかり喋っている寅さん
「今日の寅さん・・・なんか違う人みたいやから・・・」
「そうかなあ、俺はいつもと同じつもりだけども・・・」
「私が会いたいなあと思った寅さんは、もっとやさしくて、楽しくて、
風に吹かれる蒲公英の種みたいに自由で気ままで・・・あれは旅先の寅さんやったんやねえ」
がっかりしたかがりの気持は分かるが、そんなに言わないであげてくれ~(T△T)
結果的にかがりに悲しい思いをさせてしまう寅さん
帰り道電車の中、涙を流していた。
男はつらいよ~寅次郎あじさいの恋
ここまで積極的に相手からアプローチされた寅さん
その女心を前に、どうすることも出来ない寅さん
見ていてかわいそうで、仕方がなかった、
かがりさんがではなく、寅さんがだ。
ところで、今回のタコ社長の一連の行動は
度が過ぎる。いささか腹に据えかねた。(-_-メ)
「そこらの安物の瀬戸物と訳が違う。聞いて驚くな!人間国宝加納作次郎の作だ!!
デパートでもってお願いしたら10万が5万くだらない品物だが今日は私そこまで言わない
旅先で金に忙しい。ああヤケクソ!1万でどうだ!!!」
「こうた」
「おお!お父さんいい買物・・・あれ!!」
「1万円はたこうないか?もう一声」
「へへへ、まいったなあ。商売終わり。ね、知り合いと会ったから、へへへ
爺さん、冷たいビールでも飲むか?」
「ええなあ」
「なんだって、爺さんまたこんなとこにいるんだよ」
「あんたの影響でな、風のままに旅行してるんや」
「俺も爺さんの影響でね、瀬戸物なんか商いしてるんだけどさ、さっぱり売れねえな!!」
寅さんは人間国宝にまで影響を与える程の人物なのだ。
男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋
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コメント
加納作次郎の大ファンのさくら、
寅が持ってきた『打薬窯変三彩碗』に見向きもしない…。
で、あとでそれが加納作次郎作とわかったら
「これが加納作次郎かあ~」なんてマジマジと眺める。
あー、さくらっていったい…(TT)
由比ヶ浜を望めるあの成就院は『縁結び』のお寺。
優しげで落ち着いたあのお寺の雰囲気がかがりさんに
ピッタリでしたよね。
寅、頼むから満男連れて行かないでくれぇぇ、
どう考えたって縁が結べないよぉこれじゃ…(TT)
でも満男はそのお陰で寅の涙を垣間見ることに…。
この体験は満男にとってはとても大きなできごと
になったんでしょうね。満男の青年期への入り口は
あの日から始まった気がします。
成就院いつか行ってみたいな。
神奈川に住むRUUさんは行かれたことありますか?
『白くなく、紫でなくうす紅の、寅に哀しきあじさいの花』
うーん、いいですねえ…。
しっかり僕の人生のメモ帳に刻み込ませていただきました(^^)ゞ
あああ、彰さん
あの句はあじさいの恋のパンフレットから
拝借したものですぞ~~
私なんかがあんな句、とてもとても・・・
あのお寺成就院だったのですか
いや実は「あじさい寺」って鎌倉に無数にありまして
神奈川県民もあの寺は実は謎だったのです
そうかあ、今度行ってきますね
そして写真を載せるぞ!!
あじさい寺はまだですが
伊根の舟屋は
妻と天の橋立に旅行したときに
足を伸ばしました
すばらしいところでした
皆、家の軒先でイカを干してて
漁村ってかんじで
いまにもかがりさんが現れそうでした
伊根の舟屋行かれたんですか!いいなあぁ~。
僕も行って、絵にもいつかしてみたいです!
僕は大阪に昔住んでいたので、天橋立は
親に連れられて行ったことありますが、
伊根は行ってません。
わかめ刈る 与謝の入海 かすみぬと
海人にはつげよ 伊根の浦風
僕の好きな鴨長明さんの歌です。
映画評「男はつらいよ 寅次郎あじさいの花」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1982年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり