拝啓、車寅次郎様。
伯父さん、僕は近頃、
伯父さんに似てきたと言われます。
言う人は悪口のつもりなんだけど、
僕には悪口には聞こえないのです。
伯父さんは、
他人の悲しみや、寂しさが、
よく理解できる人間なんだ。
その点において、僕は伯父さんを、
認めているからです。
満男。
寅さんの甥で、櫻の息子の満男
彼は靴のメーカーに就職した。だが、
自分が本当にこの仕事に向いているか否かで悩んでいた。
そんな時に、あの人が帰ってきます
「いらっしゃいませ~お客さん何しましょ?」
「・・・そうだね、お団子でも下さい」
まったく自分が働く店の若旦那である寅を覚えようともしないかよちゃん。
寅さんは、客として座らされる。そんな寅を三平が発見
「こんにちは。かよちゃん!何やってんだよ!この人若旦那さんじゃないか!!」
「うそ!」
「嘘やないよ!櫻さんのお兄さんの、ほら、寅さん。」
「へへ、お前さんは俺の顔、覚えててくれたか?」
「忘れる訳ないでしょ。」
「櫻、お前のあんちゃんだ。覚えてるか?」 ← かよへの皮肉ですこれ
「何言ってんのよ、バカみたい。どうしたの?お団子なんか食べて」
「何しますかって聞かれたからさ」 ← まだ根に持ってます
その夜、寅さんは、仕事に悩む満男にセールスというものの真髄を教える。
翌日、満男の会社に挨拶に行くと言い出した寅さんを皆で引き止めるが
寅さんがきかなかったのでおいちゃんと大喧嘩、また旅に出て行ってしまった。
琵琶湖の畔、寅さんは一人の女性と出会う
大きな機材を運んでは、真剣に風景を撮影して回っている、宮典子だ。
撮影旅行中、彼女が怪我をし、寅さんに助けられて親しい仲になる。
典子はナーバスになっていた。怪我もあるが、彼女の結婚生活にも原因があった
もっと夫と力をあわせ、二人で生きていくような夫婦にあこがれていたのだ。
だが現実はそうではなく。日々の暮らしで夫との距離を感じていたのだ。
翌日、彼女を慰めようと祭りに誘う寅さんだったが
典子の夫が迎えに来て、突然に二人は別れてしまうのだった。
満男はというと、大学の先輩で、今は長浜の実家の家業を継いだ、川井信夫から
相談事があるといわれ、遊びがてら、滋賀県の長浜市に来ていた。
座敷に上げられた満男は、ふと隣の部屋に目をやると、
信夫の妹の菜穂が昼寝をしていた、ついつい見とれてしまう。
目を覚ました菜穂は、覗かれて不審者だと思い悲鳴を上げてしまう。
そんな菜穂は、祭りの準備で忙しい信夫に代わり、満男を観光案内をする事に。
だが、さっきの事でず~っとむくれているのだった。
「大通寺。真宗大谷派のお寺です。お寺に興味ありますか(怒)」
「べつに・・・」
「あそこに見えるのが、加賀の千代女の歌碑です。近くで見たいですか(怒)」
「あは、誰だっけ、加賀の千代女って?」
「はぁ、知らないんなら見てもしゃあないね、じゃ、次行きます(怒)」
「お姉さん。」
「え?そんな呼び方せんといて下さい!!」
「だって、俺、まだ名前、聞いてないもん」
「川井菜穂と言います!菜っ葉の菜に、稲穂の穂です!初めまして!!(怒)」
「菜穂さんどうしてそんなに怒ってるの?」
「怒ってなんかいませんけど(怒)」
「怒ってるよ、怒った顔だよ、その顔」
「寝顔をジロジロ見られたのよ!どんな気持するか分からへんの!!(怒)」
「はいはい見てましたよ、綺麗だなと思って見とれてましたよ、
それがそんなに悪いか?」
「悪いわよ!!!(怒怒怒)」
「俺もう帰るわ、先輩が相談事があるって言うんで遙々来たけど、
こんな思いさせられるとは思わなかったよ!」
満男はスタスタと帰りだす。言い過ぎたと思った菜穂は先回りして満男を待ち伏せ
二人は、急激に打ち解けていった。
湖北に古くから伝わる「曳山まつり」
曳山の上では「子供歌舞伎」が行われていた
夢中で歌舞伎に見とれている菜穂に、満男が突然聞きだす。
「菜穂さん・・・」
「なあに?」
「付き合ってる人かなんか・・・いるの?」
「え・・・?」
「男の友達」
「いてると思う?それとも、いてへんと思う?」
満男の質問に、菜穂は答えをはぐらかしている・・・
そこになんと、あの人が現れる。
「いたっていいじゃねえかよ。そいつと勝負すりゃいいんだよ。いいな。
お嬢ちゃん、こいつの事よろしく頼むよ。」
「・・・あっ、はい。・・・今の誰?」
「僕の伯父さんだよ、なんだか会うんじゃないかと思ってたんだよな」
慌てて寅さんのあとを追いかける満男だったが、群集の中、見失った。
祭りを見終え、二人はますます接近していく
「満男さん、退屈と違ごうた?お祭りなんて自分らが楽しむ物でしょう?」
「いや、来て良かったよ俺。」
「良かった、それを聞いて、安心した。」
「・・・菜穂さんにもあえたしな。」
そんな二人は、この先、恋人どうしになっていくかに思えたが、
兄の信夫の思惑を知ったことで、菜穂は激怒してしまう
信夫の相談事と言うのは、こともあろうに菜穂と満男の縁談だったのだ
満男は当然、”菜穂の気持がある事だから”と真に受けたりしなかったのだが
信夫は少々軽薄な人間で、事実を曲げて伝えてしまい、ますます菜穂を怒らせる
「私を何やと思ってるの?何が私の幸せや、大きなお世話やん!
女は必ず結婚せなあかんとか、結婚が女の全てとか、そんな考え方に
私は根本的な疑問を持っているんやさかい、それははっきり覚えといて!
二度と私の生き方に、口なんか出さんといて!!」 ← 少し考えがリリー寄り
満男も結局失恋してしまった事になる。
寅さんが柴又に帰ると、留守中、典子が訪ねて来たという。
翌日、寅さんは満男に車を運転してもらい、鎌倉の典子の家に向う
家の前、車の中から、元気そうな典子の姿を見届け、安心した寅さんは
声を掛けることも無く、そのまま鎌倉高校前駅から江ノ電で旅にでる。
「宮典子さんて、綺麗な人だな。琵琶湖の畔であんな人に恋してたのか伯父さんは」
「そんな事してねえよ。ただぼんやりと眺めてただけだよ」
「綺麗だと思ってかい?」
「そりゃそうだよ」
「それが恋ってもんじゃないのか?」
「うるせえな、それよりお前の方はどうなんだよ」
「それがね伯父さん、見事にふられたよ。ビシっとね」
「失恋はな、名誉の負傷じゃないんだから、偉そうに見せびらかすんじゃないんだよ」
「でも正直言ってホッとしてるんだ。くたびれるもんな、恋するって」
「満男!!くたびれたなんて事はな、何十遍も失恋した男の言葉なんだよ。
お前まだ若いじゃねえか、え?燃えるような恋をしろ!!
大声出してのたうち回る様な、恥かしくて死んじゃいたいような恋をするんだよ!
ホッとしたなんてなさけない事言うな、馬鹿野郎!さみしいよ俺は。」
「伯父さん、俺、反省してるよ」
「今度会うときは、もっと成長してろよ」
お正月、満男が江戸川堤を歩いていると
前から歩いてくる、菜穂の姿。
菜穂は兄のした事で、自分たちが不仲になるのは違うと言う
満男もまた同じ気持だった。
男はつらいよ~拝啓車寅次郎様~
「相手がいようが、そいつと勝負すればいい」
「燃えるような恋をしろ」
寅さんが満男に向けた言葉は
私には、寅さんがみずからを鼓舞する言葉のように思えた。
琵琶湖の畔で典子を見つめるそのまなざしが
「俺なら寂しい思いをさせたりしないのに・・・」
と言っているかのようだったからだ。
もちろん、勝負したりしないのが、車寅次郎なのだが。
ところで、
菜穂よ、お正月はどこの家でも色々用事とかもあるんだから
前もって連絡入れてからお伺いしなさい
ホント、泉といい、菜穂といい・・・ ( ̄~ ̄;)
くるまやの三平とかよちゃんがいい仲になっているようです
”次結婚するのは三平ちゃんね”と櫻が言ったときに
かよちゃんが照れてましたから・・・(ToT)
かよ好きの私にとっては
プリプリ怒ってばっかりの菜穂ちゃんも好きです (* ̄∇ ̄*)
寅さんと満男が鎌倉行くのこれで二度目ね (^o^)
子供歌舞伎の場面でいきなり後ろから寅さんが現れたシーン
映画館が大爆笑だったのをよく覚えています
コメント
寅のアリアの部分でさくらのお母さんとの
鉛筆にまつわる思い出話が出てきますが、
あの場面とても好きです。
寅の幼少期がそんなに不幸せじゃないことが
あのエピソードでわかるんですね。
そのことが私にはとても救いでした。
菜穂ちゃんと満男はその後どうなって
しまったのでしょう。なしのつぶてですよね。
菜穂ちゃんが満男の家まで来たのですから
普通あのあともっと進展するでしょう。
二人は結構お似合いだったのに…。
やはり第46作、第47作に限っては
満男も寅のように異空間に棲んでいた
のでしょうか。
ちなみに菜穂ちゃんのお母さんは、
博のお姉さんの信子さんですよね。
第32作によると大阪の千里ニュータウンに
住んでいるはずなのに
なぜ長浜に?再婚したのかな(^^;)
そうそう三平ちゃんとカヨちゃんは
あの感じでは結婚間近ですね。
RUUさん可哀想…。
彰さん
「寅次郎物語」の冒頭の夢のシーン
寅の母(櫻の実母)の台詞がありましたね
「寅次郎、あやまんな、お前が悪いんだよ」
なんだか、愛情にあふれた人に感じました
菜穂と満男は実は同時進行
泉には内緒です
なんせ車平造の孫ですから
・・・んな訳ないすね
「いたっていいじゃねえかよ。
そいつと勝負すりゃいいんだよ」
ん~、
誰かそれをそのまんま寅に言ってくれませんかって感じですね~♪
今年、私も鎌倉の典子さんの家を訪ねましたが
表札の名前は”MIYA”じゃありませんでした!?
引越されたのでしょうか・・・?(笑)
小寅さん
見てますとも。
あれって偶然’宮宅’を見つけたんですよね
凄い事もあるんだな~と思いました
小寅さん凄すぎです
「浪花の恋の寅次郎」で
ホテルの若旦那が寅さんに説教したのを思い出しました
あの人ダメ~な感じなのに
説教の時はかっこよかったです。
男はつらいよ 拝啓 車寅次郎様
男はつらいよ 拝啓 車寅次郎様(1994/日本)
評価(お奨め度)★★★☆☆
監督: 山田洋次
製作: 櫻井洋三
プロデューサー: 野村芳樹/深澤宏
原作: 山田洋次
脚本: 山田洋次/朝間義隆
撮影: 高羽哲夫/池谷秀行
美術: 出川三男/横山豊
編集: 石井巌
音楽: 山本直純/山本純ノ介
照明: 野田正博
録音: 鈴木功
出演: 渥美清/倍賞千恵子/かたせ梨乃/小林幸…
映画評「男はつらいよ 拝啓車寅次郎様」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1994年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり