男はつらいよ~寅次郎紅の花~

男はつらいよ

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お兄ちゃん、
一緒になるなら、
りりーさんしかいないのよ!

寅さんの甥で、櫻の息子の満男
彼はもう結婚を考えても
おかしくない年頃なのだが
結局、満男は初恋の人、
の事が忘れられないのだ。
そんな時、泉が訪ねて来る
泉は、岡山県津山市の
医者の卵と見合いをして
その返事をする前に、
昔からただならぬ間柄の満男に
一言相談したかったのだ。
もしかすると満男に引き止めて欲しいのかもしれない。
満男は引き止めたい気持はあるのだが
そんな事が出来るはずも無く適当な返事でごまかしてしまう・・・
泉の結婚・・・満男は張り裂けそうな気持を抑えきれずに
会社を無断欠勤、蒸発してしまった。


寅さんは、ご無沙汰の為。心配かけまいと久しぶりに故郷に電話をかける
・・・が、またしても立ちはだかる寅さんの天敵、くるまやの店員、木村かよ
「はい、くるまやです。は?天気ですか?柴又は昨日から雨ですけど?」
「あそうか、ふ~ん、じゃ全国的に雨なんだ。くさくさするねえ」
「・・・おたく、誰ですか?」
「え?あっこりゃ失礼、俺は寅だ、寅」
「どこの寅さんですか?」 ← 柴又で知らないの君だけだよ、多分
「なに???櫻を呼べ、ちょっと櫻を呼べよ」
「まだ来てません(怒)」
「だったら家のもんだったら誰でもいいから呼びなよ」
「誰もいません(怒怒)」
「死んじまったのかみんな!!」
「生きてます(怒怒怒)」
「生きてる?そりゃ結構だ。俺はねえ、長い間ご無沙汰してるけども
無事に過ごしているからご安心下さいって、そう伝えてくれよ、え?」

ガチャ!! ← かよちゃん、自分の店の若旦那の電話をカットアウト!!!
その事を聞いた櫻は、せめてこんな時居てくれたらと落ち込んでいた。


泉の結婚式当日。岡山県の津山市には、花嫁を乗せた車は、
どんな事があってもバックできない。戻るのはげんが悪いというしきたりがある。
泉を乗せた車が狭い路地にさしかかると、対向車がいて立ち往生してしまった。
「花嫁さんの乗ってる車じゃけ、すまんけどあんたの方がさがってくれんじゃろか?」
そう言っても全然動かないその車。
運転していたのは、なんと満男だった。何とか泉に結婚しないで欲しかったのだ
満男は泉の乗るハイヤーに車を押し当て、さがらせてしまう。
「泉ちゃん!!泉ちゃん!!結婚なんかやめろよ!!結婚すんなよ!!!」
新郎の関係者はカンカンに怒り、満男を袋叩き。
結婚式も中止になってしまった。
取り返しのつかない事をしてしまった満男はその後、
あても無くさまよい、いつしか奄美大島にたどり着いた。自殺を考えていた・・・
そんな満男を、一人の女性が、船で見てからずっと気にかけていた
彼女は、”自殺でもされたら後味が悪い”と満男の面倒を見る事に。
「お姉さんは、島の人ですか?」
「流れ者よ、昔からこの島が好きでね、年寄りと結婚したら3年位でポコっと死んで
しまってね、少しばかり遺産が入ったもんだから、あそこの空き家を買ったの」

「じゃあ、お姉さんは一人で暮らしてるんですか?」
「そう。でもひと月程前から居候がいるけどね、あんたみたいに文無しなの
遠慮は要らないのよ、気楽な人だから」

ちょうど家に着き、彼女は満男に紹介する為、その居候を呼んだ。
「寅さ~ん!ただいま!!」
なんと、その居候は寅さんだった!!
「はい、お帰り。あ、こんにちは・・・お!?、お前誰だっけ?」
「誰じゃないよ!俺だよ伯父さん!!」
「ああ、満男か!」
「会いたかったんだ!どうしてたんだよこんなとこで!!」
「お前こそ何してんだこんなとこで?」
「・・・ね、寅さん、もしかしてこの子」
「そうだよ、俺の甥っ子、櫻の息子だよ」
「じゃあ満男君!!や~だ~どっかで見たような顔だと思ってたのよ~!!」
「満男、ほら、リリーだよ、リリー」
「大きくなってこの子は~、あたしが訪ねてった時あんたまだ小学生だったのよ~」
何というめぐり合せ。その女性は、なんとリリーであったのだ。

その夜寅さんは、何度もくるまやに遊びに来て、何回も会ってて、
一緒に風呂まで入ったリリーに気付かないのかと、満男をばかにするが
満男は寅の恋した人が多すぎるのだと実例をあげ反論。
・かがりさん・・・だよな、鎌倉デートに引っ張り出されたから強烈に覚えてるよね
・螢子さん・・・・くるまやでの寅の下手な芝居をみてたかな?
・真知子さん・・・満男が駅から案内してきたね、寅さんに息子と間違えられてた。
・朋子さん・・・・それは言うな満男、みんな傷ついてんだから、ファンもみんな。
そして満男はもう一人、印象に残っている女の人の事を思い出す。
「ああ!そうだ、北海道で知り合ったって売れない歌手で、
伯父さんとは全然似合わない華やかな人」

「それがリリーだよ!!馬鹿だなあ!!」
「エヘヘ、あたしも一応、数のうち?」
「・・・すいません」
「どうだい、リリーが一番いい女だろう?」
「いいですよ、取ってつけたようなお世辞なんか言わなくたって!」
そして二人は、網走での出会い、函館での再会、沖縄での日々・・・と
何度もめぐり合った思い出を語り合い、
島の人々の歌う島唄が聞こえる中、酒を酌み交わすのだった。


満男が泉にした事。それは決して許されるものではなく、後悔にさいなまれる
そんな満男を苦々しく思う寅さん
「リリー、まるでガキだよコイツのしてる事は。ったくえらい事してくれたなあ」
「あら、そんなに悪い事なの?満男君のしたことは。」
「決まってるじゃねえか。泉ちゃんが今どんなに辛い思いをしてるか・・・」
「へえ・・・どんな風に辛いの?」 ← 寅さん、リリー怒りそうですぞ・・・
「分かってないなお前も、古い城下町だよ、町中噂でもちきりだよ。
泉ちゃん買物にも出られやしねえよ。可哀そうになあ。」

「分かってるよ伯父さん!俺だって後悔してんだよ」
「後悔する位だったらどうしてじ~っと我慢できなかったんだ。
男にはな、耐えなきゃいけない事がいっぱいあるんだぞ。
”泉ちゃんおめでとう、どうぞお幸せに”電報一本ポーンと打っといて、
お前は柴又から津山の空に向って両手を合わせる”無事に結婚式が行われますように”
それが男ってもんじゃないのか?」
 ← ダメだ、完全にリリー怒りますこれ
「バカバカしくて聞いちゃいられないよ。」
「なんだい?どこが気にいらねえんだ?」
「それが格好いいと思ってんだろ。だけどね、女から見りゃ滑稽なだけなんだよ」
「お前何が言いたいんだよ、リリーは」
「格好なんて悪くたっていいから、男の気持をちゃんと伝えて欲しいんだよ女は!
大体男と女の間ってのは、どっかみっともないもんなんだ。
後で考えてみると、顔から火が出るような恥かしい事だって沢山あるさ、
でも、愛するって事はそういう事なんだろ?奇麗事なんかじゃないんだろ?
満男君のやった事は間違ってなんかいないよ!」
 ← いや、りりーさん、時期が・・・
「ちょっと待てよ、俺は、男は引き際が肝心だって言ってるの。それが悪いのか?」
「悪いよ!馬鹿にしか見えないよそんなのは。自分じゃ格好いいつもりだろうけど
要するに卑怯なの、意気地が無いの、気が小さいの。体裁ばっかり考えてる
エゴイストで、口程にも無い臆病者で、つっころばしてぐにゃちんで、
とんちきちんのおたんこなすだってんだよ!!」

車寅次郎という人間を批判する時、これ以上の言葉は無い。そしてこの言葉は
同時に、自分と寅が何故に結ばれないのかを、寅本人にぶつけている言葉でもあった
寅へのリリーの愛が隠されているのだ。・・・つっころばしてぐにゃちんは余計。
リリーは部屋から出て行ってしまう。
寅さんも本当はリリー言った事が分かっていたのかもしれない
そうして、3人の後悔の日々は過ぎていった。


そんな中、島に泉がやってくる。
寅とリリーが見守る前で、波打ち際でぼんやりとしていた満男のもとに詰め寄る泉
「何であんな事したの!!どうして!!」
怒鳴る泉にたじろぎ、声も出せずに後ずさりする満男 ← そっち海だけどね
「黙ってないで何とか言ってよ!どうしてなの!何故なの!!何故!!!(怒)」
「それはね・・・」
「なに?」
「あのね・・・あの・・・」
「言って!訳を言って!!」
「・・・愛してるからだよ!!!!!!!!」
「もう一回言って!!」
「俺は!泉ちゃんを・・・ブブブ」
そこで足を取られ、海にはまってしまう満男だった。
泉はやっと、待ちわびていた満男からの愛の告白を受ける事ができた。
「あ~あ、無様だねあの男は。何とかなんないのかね」 (寅)
「いいじゃないか無様で・・・若いんだもの。私達とは違うのよ・・・」 (リリー)


そして、寅さん達は柴又に戻る。リリーも東京の用事でしばらくくるまやで過ごす
ある日リリーが友達の家に泊まった翌朝、寅さんが男か女かとしつこく詮索した為
二人は喧嘩をしてしまう。一人帰ろうとするリリーを必死に引きとめる櫻・・・
「お兄ちゃん、リリーさん帰るのよ。何してるの!一緒に行くんじゃないの!」
「何で俺がリリーと一緒に行かなきゃならねえんだよ」
「もう、分かんない人ね、リリーさんは本当は一緒に帰って欲しいんじゃないの?」
「お前達何か誤解してるんじゃないか?俺とリリーはそんな間柄じゃねえんだよ」
「そう・・・誤解なの・・・今だから言うけど、お兄ちゃんとリリーさんが
一緒になってくれるのは私の夢だったのよ。お兄ちゃんみたいに自分勝手で
わがままな風来坊にもし一緒になってくれる人がいるとすれば、お兄ちゃんの
ダメな所をよく分かってくれて、しかも大事にしてくれる人がいるとすれば
それはリリーさんなの。リリーさんしかいないのよ!!そうでしょお兄ちゃん!!」

櫻の必死の訴えも寅には届かなかった・・・
タクシーを待たせていたリリーはもう行かねばならなかった
その時、なんと、身支度をした寅さんが部屋から降りてくる
「おう!!リリー、送ってくよ」
「あら、どういう風の吹き回しだろうねえ」
リリーは寅さんの気持が本当に嬉しかった。だが素直になれない二人がそこに居た
「それじゃさよなら寅さん」タクシーに乗りこみ、寅さんに別れを告げるリリー
その時、寅さんはタクシーのドアを開けて自分も乗り込んだ
「あらぁ?寅さんも乗るの?」
「か弱い女を一人旅立たせる訳にもいかねえだろ」
「あらぁ嬉しい!運転手さんお願いします。JRの金町駅」
「散々待たせて1メーターかよ。はいはい、行きますよ」
「・・・ねえ寅さん、どこまで送って頂けるんですか?」
「男が女を送るって場合にはなあ、その女の家の玄関まで送るって事よ」
「本当?私の家まで来てくれるの?!
運転手さん、金町じゃなくって、私の家まで行って」

「私の家じゃ分からないよ」
「私の家はね、加計呂間島」
「カケロマ?聞いた事ねえな、江戸川区かい?」
「違うの、奄美大島。鹿児島県のう~んと南」
「降りてくれよ!こっちは真面目に働いてんだよ!そっちの冗談付き合ってられないよ」
「ごめんねえ~じゃ羽田空港まで行って。だったら文句ないでしょ?」
「チップはずむからよ」
「・・・羽田ならいいよ。」
その後二人はしばらく加計呂間島で幸せに暮らしたのだが、
些細な喧嘩が元で、寅さんは置手紙を残して出て行ってしまった。




男はつらいよ~寅次郎紅の花~
車寅次郎は惚れた女性が自分に好意を持つと、タチマチ逃げ出してしまう
それは、相手の幸せを思ってのやさしさ。
そして、自分が風来坊であるがゆえのわきまえ・・・
リリーの言葉は、そんな寅次郎に隠された真実を物語っていた。
卑怯者、臆病者、小心者、エゴイスト、自分勝手・・・
その言葉を受けて、寅さんは少しずつだが、変わっていった。
そんな寅さんは、この先どんな恋をするのだろうか。
そしていつか、またリリーとめぐり合うのだろうか。





ところで、
満男がやっと泉に言ってくれました
「何で連絡くれないんだ?前もって。」


鹿児島の港のシーンでかかる島唄は
なんと、あの歌手の、元ちとせさんの歌声です


泉に見とれた三平にやきもちを妬くかよちゃん
「へえ~おたくああいうのタイプ?」
う~ん、そういう男とは別れた方がいいね (* ̄∇ ̄*)



長文で大変失礼しました~



コメント

  1. 彰(あきら) より:

    生前に渥美さんが寅を一言で言うとと聞かれて
    こう言ってましたよね。
    「寅はてめえ(自分)が一番かわいいんでしょうね」
    この言葉は寅がなぜ得恋的失恋を
    神経症的に繰り返さざるを得ないかを
    端的に言い切った名言だったと思います。

    そしてこのシリーズの最後の最後で
    最愛の人リリーにその言葉を言わせた山田監督。
    ついにその部分の本音をちらっと出してくれて
    僕は本当に嬉しかったです。
    この寅の裏の部分が出てこないと寅という
    人間のほんとうの悲しみと孤独は
    絶対わからないですもんね。

    カヨちゃんの三平ちゃんに対する
    あの発言は、彼女の好意の表出に
    なってますね。こりゃあのふたり
    結婚間近。ふふふ(^^)

    ちなみにあのふたりは現在
    「釣りバカ」でハマちゃんの
    同僚として活躍していますね。

  2. RUU より:

    彰さん
    「旅先で、ふるいつきたくなるような
    いい女とめぐり合うことさ。」
    寅さんの生き甲斐です

    きっと恋の目的が、成就じゃないんですね
    めぐり合う事が最高の喜びなんですね
    でもそれでは、寅さんはいいけど相手の女の人は・・・


    ところで
    あの波打ち際の満男に
    泉ちゃんがツカツカ詰め寄る浜辺のシーン
    僕はこの作品のベストショットだと思いました
    なんていい絵なんでしょう
     



  3. 彰(あきら) より:

    あの波打ち際のシーンは満男の
    愛の告白シーンであると同時に
    泉ちゃんからの告白でもあるんですよね。
    ずっと一人寂しい思いをしていた泉ちゃんの
    数々の歴史が走馬灯のように駆け巡り
    僕も目頭が熱くなるシーンでした。
    もう泉ちゃんはこれからは寂しい思いを
    しなくてすむんですよね。そのことがただただ
    嬉しかったです。

    あとは泉ちゃんが津山に行って元婚約者に
    きちんとけじめをつけないとね。
    これはギリギリでは泉ちゃんの
    問題なので逃げては前に進めません。

  4. RUU より:

    彰さん
    津山でお金の話になってなきゃいいんですが・・・
    まあ金持ちみたいだから
    女の人に金を請求するような事はしないでしょう


  5. 彰(あきら) より:

    泉ちゃんの婚約者は泉ちゃんのことを
    とても好きだったと思うんです。
    あの泉ちゃんを見るうれしそうな顔と言ったら
    なかったですよね(^^;)
    だから泉ちゃんの本当の気持ちだけ
    知りたいだけでお金に絡むような内容のことを
    一切言わないと思います。

    でも、泉ちゃんと満男は彼のその気持ちとは別に
    「誠意」を見せなければいけないと思うんです。
    それはお金ではないとは思うんですが、
    そうは言ってもやはり費用の損害は人に
    借りてでも全額支払うべきだとは思います。
    まあ、元婚約者のほうはプライドがあるので
    彼本人は絶対受け取らないのは分かっていても、
    それでも向こうのご両親に密かに支払うのが
    人の道というか、筋ではありますよね。

    まあ、映画なのでそこまで考えなくてもいいかあ~(^^)
    チャンチャン♪

  6. RUU より:

    彰さん
    そう言われて見ると確かにそうですね
    満男や泉はお金なさそうだから
    銀行で借りるようですね
    ここはひとつ、
    「柴又四ツ木向島銀行」
    で何度も交渉だ!!
    あ、この銀行は
    寅さんも口座を持つと言う
    「柴又銀行」と
    「四ツ木銀行」と
    「向島銀行」が三社合併した銀行です
    通称”しばぎん”です。 ( ̄▽ ̄)

  7. 小寅 より:

    今まであまり気にしてませんでしたが
    津山の問題は大きいんですね~

    お金といえば
    「とらや」の二階をワット君に
    爆破されましたが
    きっと人のいいとらやは
    藤子さんが弁償するといっても
    自分で修理したんでしょうね♪

    そういえば・・・
    朝日印刷に投資した博さんは
    利益が出たんでしょうか?(笑)

  8. RUU より:

    小寅さん
    満男が壊した鳥取の料亭の階段の手すり
    もタダにしてもらってましたから
    いってこいでチャラですね
    「情は人の為ならず」ってとこですね

    朝日印刷の投資は。う~~ん( ̄_ ̄ i)

  9. シネマの箱 より:

    男はつらいよ 寅次郎紅の花

    男はつらいよ 寅次郎紅の花(1995/日本)
    評価(お奨め度)★★★★☆
    監督: 山田洋次
    製作: 中川滋弘
    プロデューサー: 深澤宏
    企画: 小林俊一
    原作: 山田洋次
    脚色: 山田洋次/朝間義隆
    撮影: 長沼六男/高羽哲夫
    美術: 出川三男
    編集: 石井巌
    音楽: 山本直純/山本純ノ介
    照明: 野田正博
    録音: 鈴木功
    出演: 渥美清/浅丘ルリ子/夏木マリ/後藤…

  10. 映画評「男はつらいよ 寅次郎紅の花」

    ☆☆☆☆(8点/10点満点中)
    1995年日本映画 監督・山田洋次
    ネタバレあり

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