男はつらいよ~寅次郎の告白~

男はつらいよ

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恋の悩みなら、おじさんのキャリアが物を言う

満男が恋焦がれる、及川泉
彼女は今、就職試験で東京に来ていた。
両親が離婚し、水商売の母との二人暮らし
その為、高校を三回も転校・・・
泉の就職はうまくいかず落ち込んでいた

家庭生活の方も、母に恋人ができて
よく家に連れてきていた
多感な年頃の泉にとって
そんな母が不潔に思えた

泉は悲しみのあまり、家出をしてしまう
鳥取から満男宛に届いた、泉からの絵葉書・・・
その文面からただならぬ気配を感じた満男は、泉を探しに鳥取へと向った。


鳥取の町。悲しみに暮れ、あても無くさまよい歩く泉
「こんにちは、このアンパン下さい」
「自分で取んさいな」
「ここで食べてもいいですか?」
店主のおばあさんは、泉のさびしさを一目で察する。
「あんた。中へ入んさい。お茶入れてあげるけえ」
「はい・・・」
「腹減っとんさるだか。今な、晩御飯の支度するけ、あんたも一緒に食べよう」
おばあさんは、泉に夕食をふるまい、泊めるつもりなのだ
放っておくと、何するか分からないと感じたのかもしれない。
豆腐を買って歩く泉・・・
ふと目を先に向けると、なんと、そこには寅さんの姿があった。
「おじちゃま」
「泉ちゃんか!!」
「どうしてこんな所にいるの・・・どうして・・・」
泉は寅にすがり、泣きじゃくった。
「どうした?、え?、何があったんだ?」
「会いたかった・・・おじちゃまに・・・」
「何か悲しい事があったんだな、よし、もう大丈夫だ、な、俺がいるから」
3人でおばあさんの家に泊まる。おばあさんは泉の為に三味線で一節披露。
「おじちゃま・・・もう寝たの?」
「ん、おきてるよ」
「おじちゃまは、何も聞かないのね・・・」
「お前が風呂に入っている時に、櫻に電話してちゃんと聞いたよ。家出したんだって?
満男は心配して、泉ちゃんの事を探しに出向いたってさ、鳥取の砂丘で待ってるって
今頃、砂丘のてっぺんで、”泉ちゃーん”なんて叫んでんじゃないの?おかしいねあいつは」

「悪い事しちゃったな・・・」
「原因は何なんだい?よかったら、俺に話してみねえかい?」
「あたしが悪いの、それは分かってるの。ママに好きな人がいるの。それはいいのよ
よかったら再婚すればいいいの。それがママの幸せなら私は祝福しなければいけないって
頭では思うんだけどね、心はそうじゃないの、イヤなの、不潔なの、汚ならしいのママを見てると」

「少しも悪くねえじゃねえか、泉ちゃんがお袋さんの事をそう思うのは当たり前なんじゃないか?」
「ううん、そうじゃない、絶対違う。ママを一人の女性として見る事が出来ないのは
私の心に何かいやらしい、汚いものがあるからなのよ。だから私間違ってるの」

「泉ちゃんは偉いなあ。俺はなあ、親父が酔っ払って芸者に生ませた子供なんだよ
だから櫻とは腹違いなんだ。ひどいお袋でなあ、俺の事を生みっぱなしでもって逃げちゃった
んだ俺は一生うらんでやろうと思ったよ。でも泉ちゃんの話を聞いて、少し俺も反省したなあ
あんなババアでも、一人の女性として見てやんなきゃいけねえんだなって・・・
そうだ、腰巻でも買って送ってやるか、あのくそババアに」

この晩、泉はどんなにか気持が楽になったことだろう
こんな素晴らしい人々に心配されて、泉ちゃんは全く不幸ではないですね
翌日、鳥取砂丘に向う、寅さんと泉
かがやく海と、砂丘と、上から転がり落ちてくる満男を見て
泉の心は、いつしかすっかりと晴れていた


3人は寅さんの古い友人の営む料亭で食事をする
ここの女将の聖子は、その昔寅さんが恋した人で、結婚まで考えたのだが
ライバルの板前にさらわれてしまった人。
いまだに寅さんは、その事を皮肉交じりに言うのだそうだ。
「亭主は無事か?、鮎釣り行って、深みにはまり込んで、おっちんだりしねえのか?
まだ生きてる?、けっ!、勝手にしろい!!へへへ。そう言ってんだよな?お聖ちゃん」

「そうだなあ、会うたんびにそんな事言っとんさったな」
「ところでどうだい?その亭主はまだ死なねえのか?元気か?二枚目の板前は?」
「死んでしまったの・・・」
「死んでしまったのだって・・・悪い冗談よせよお聖ちゃん!!」
「冗談じゃないのよ本当なのよ・・・寅さんの予言どおり、どしゃ降りの中で鮎釣っとってな
鉄砲水に流されて、二日後にどざえもんになって上がっただが・・・」

ハッと我に返り、神妙に挨拶をする寅。急遽帰るのを取りやめて、主人の墓参りに行く
今夜はこの料亭に泊まることになってしまう。


やっと仕事を終え、お客さんを帰すと、聖子と寅さんは二人っきりでお酒を飲む
薄明かりの部屋ですっかり酔っ払う聖子は
生前、亭主に浮気で泣かされ続けた事を打ち明ける
「私・・・後悔しとる・・・」
「・・・何を?」
「寅さんにしようか、あの人にしようか迷っとって、結局あの人を選んでしまったんだけど
私アホやったなあ・・・寅さんにすりゃよかったなあ・・・」

「い・・・いま・・・いまさらそんな事言われてもなあ・・・」
寅さんに寄り添う聖子・・・電気が消える・・・
「今夜は、使用人みんな帰しただで・・・どうして逃げんさるだか・・・」
抱きつく聖子。たじろぐ寅さん。
その時、なんと、満男が二階から落ちてきた
寅が心配で覗き込んでいたが、手すりが壊れ、池に落下したのだ
寅さんと聖子の甘い夜は、邪魔が入ってしまうのだった。



翌日
「ねえ、おじちゃまは前からあのおばさんが好きだったんでしょ?いずれ二人は結婚する訳?」
「そんな方程式を解くようには行かないんじゃないか?男と女は
あのおじさんはね、手の届かない女の人には夢中になるけど、
その人がおじさんの事を好きになると、あわてて逃げ出すんだよ
今までに何遍もそんな事があって、その度に俺のお袋泣いてたよ」

「どうしてなの?どうして逃げ出すの?」
「綺麗な花があるとするだろ?その花をそっとして置きたいという気持と
奪い取ってしまいたいという気持が男にはあるんだよ、あのおじさんはどっちかと言うと
そっとしときたい気持の方が強いんじゃないかな?」
 ← なかなか分かってるね80点
「じゃあ、先輩はどうなの?」
「え~~奪いとってしまう方だよ!!。なんちゃってね~~」

バス停で3人を見送る聖子は、別れ際に寅さんへキツーい挨拶
「覚えとるだか?、夕べ何したか?」
「い、いや、俺は何も・・・」
「私も!すっかり酔っ払ってしまって、な~んにも覚えとらん!!」
そう言って、思いっきり寅の手をつねる聖子だった。



寅さんは鳥取駅で、満男達を見送る
「おじちゃま、色々ありがとう」
「お母ちゃんと仲良くな。女だから時々寂しくなる時があるんだよ。分かってやれよ
「おじさんは、寂しくないの?」
「馬鹿野郎、俺は男だい、寂しさなんてのはな、歩いてるうちに風が吹き飛ばしてくれらあ」
海岸沿いを走る電車のなか、満男はいつまでも泉の手を握ってあげていた



旅先から櫻に電話をする寅さん
「ねえ、どうして一緒に帰ってこなかったの?」
「帰りたいのは山々だけど、商売もあるし、それに・・・満男からきいたろ?何もかも」
「ううん、聞いてないわ、何があったの?」
「え?聞いてない??あっそう、うん、何でもないよ、それじゃ」
電話を切り、寅さんはつぶやく
「満男のやつ、黙っててくれたか・・・あいつもだいぶ成長したな」



男はつらいよ~寅次郎の告白
寂しがっている泉に、満男や、寅さんや、駄菓子屋のおばあさんがそばにいてあげる
寂しがっている母に、泉が理解を示してあげる
寂しがっている聖子に、寅さんが、不十分ながらも、寄り添ってあげる
寂しがっている寅に、櫻が、何も知らないフリをして、帰ってこいと呼びかける
そんな、人の思いやりが、たくさん描かれている作品です。




ところで、
御前様がカミングアウトします
「私の恋の激しさときたら、寅なんか問題じゃありませんでしたよ」


久々に寅さんとタコ社長が大喧嘩します
「お?おい、会社?会社ってどこにあんだ?」
「裏にあるじゃねえか」
「え~!な何だいあの薄きたねえ小屋が、会社か?いや俺会社ってのはさ
で~んとしたビルの受付に綺麗なお嬢さんが2、3人いて
”はい、いらっしゃいませ”ってのが会社なんじゃないの?
何だお前んとこなんか、こんちはって開けたらすぐ便所じゃねえか、馬鹿野郎」

「そういうてめえは何だ!、ていのいい失業者じゃねえか!!」


寅さんとポンシュウに見習いの若い衆、サブが付きますが
「拝啓」という字が書けなかったので寅さんにくびにされました
ちなみに寅さんも書けません  ( ̄▽ ̄;)




コメント

  1. 彰(あきら) より:

    「何か悲しい事があったんだな、
    よし、もう大丈夫だ、な、俺がいるから」
    こんな言葉を寅から言われて
    泉ちゃんはほんとうに幸せですよね。
    どんな子供も、そして大人でさえも
    みんな寅にそういって欲しいのです。
    人の情けと優しさが身に沁みた作品でした。

    ちなみに僕、サブ役の渡部夏樹さん好きです。
    『ダンボールと嫁さん』いいですねえ~(^^)
    でもその後の第47作でなんとテキヤに
    復活しポンシュウたちと一緒にバイをしていました。
    ダンボールと嫁さんはどうしたんでしょう?
    彼は映画『息子』でも実にいい味出してました。
    別名、とうもろこし君(^^)

    津嘉山さん、今回は前作のマドンナである泉ちゃんの
    ママの恋人役!なかなか渋くてカッコイイ~。
    作次郎の弟子、蒲原さん以来の渋い役ゥ、なんて思ったら
    案の定泉ちゃんにいきなりドア開けられて
    思いっきり転んでました。
    ああ…やっぱりああいうキャラか…(TT)


  2. RUU より:

    今回、泉ちゃんが母を”汚い”と思ってしまったのは
    恋人役の津嘉山さんの発するオーラも手伝ってますね(^^)


    「くそババアとは何やねん」という菊の声が聞こえてくるようです

  3. horus より:

    寅さんには、ほんと映画の
    中ではありましたが、励まされました。

    ここに来て、満男の成長に光をあて、今青春
    の中にいる人達に寅さんからのメッセージをなげかけてるん
    だと思いました。ゆっくり映画館で又見たいものです。

    私事ですが、ブログ引っ越ししました。
    これからも宜しくお願いします。
    http://blogs.yahoo.co.jp/skyhigh1225

  4. RUU より:

    horusさん
    私もまた再び名画座でみようと思っています

    お引越しした事、とっくに知っていますよ~~~(^^)

  5. 小寅 より:

    恥ずかしながら「寅次郎の告白」は最近観てなかったことに気付いて週末観ました(笑)
    決して初期の頃のような派手さはないものの、しっとりと楽しめますね。
    私はこの頃の作品の満男と博のやり取りが結構好きです♪

  6. RUU より:

    小寅さん
    私、この作品みたあと鳥取旅行しましたよ~
    鳥取砂丘しかロケ地は見れませんでしたが
    小寅さんだったら沢山見つけられそうですね

  7. シネマの箱 より:

    男はつらいよ 寅次郎の告白

    男はつらいよ 寅次郎の告白(1991/日本)
    評価(お奨め度)★★☆☆☆
    監督: 山田洋次
    製作: 島津清
    プロデューサー: 深澤宏
    企画: 小林俊一
    原作: 山田洋次
    脚本: 山田洋次/朝間義隆
    撮影: 高羽哲夫/花田三史
    美術: 出川三男
    編集: 石井巌
    音楽: 山本直純
    照明: 青木好文
    総指揮: 奥山和由
    助監督: 阿部勉
    出演: 渥美清/倍賞千恵…

  8. 映画評「男はつらいよ 寅次郎の告白」

    ☆☆☆★(7点/10点満点中)
    1991年日本映画 監督・山田洋次
    ネタバレあり

  9. 男はつらいよ 寅次郎の告白(男はつらいよ44) #724

    1991年 日本 104分 BS本放送放送前の寅さん百科が「江戸川」にスポットを当てている通り、江戸川の思い出を寅さんが語るオープニングでスタート。そう言われれば寅さん、柴又駅から遠回りして江戸川沿いを通って帰ってきてる。寅さん百科記録しておけばよかったなあ・・・。..

  10. 『男はつらいよ 寅次郎の告白』44作目(1991・日本)64点。ネタバレ感想

    人生アドバイザー・寅さんのいいセリフがたくさん聞ける作品。
    でも、あまりまともなことばかり言う寅さんってどうだろう。
    吉岡秀隆と後藤久美子に駆け落ちくらいけしかけてほしいと思うのは私だけか。


    あらすじ(ネタバレあり)

    及川泉(後藤久美子)が、名古屋から上京してきた。
    満男(吉岡秀隆)に連れられ、くるまやを訪れる泉。
    ちょうど寅さん(渥美清)も帰ってきていた。

    楽…

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