男はつらいよ~浪花の恋の寅次郎~

男はつらいよ

画像
あずま男に、京おんな・・・寅さんとふみの恋の物語

青い海に囲まれた瀬戸内の小さな島。
寅さんとふみは出会った。
質素だが、どこか気品にあふれ、
素人離れした美しさを放つ女性
そんなふみに寅さんは一目で恋におちる。
そしてふみも・・・
「お兄さんこれからどうするの?」
「風のふくまま気の向くままよ」
「自由でいいねえ、魚みたいに。
お兄さん、名前なんて言うの?」

「俺な、東京は葛飾柴又の車寅次郎って言うんだ、
人は寅と呼ぶよ」

「寅さんね」
「姉さん、あんたの名前なんてんだい?」
「浜田ふみ」
「おう、じゃあおふみさんか、じゃあな、幸せにやれよ!」


それから寅さんは大阪へ、友達の経営する「新世界ホテル」で
宿賃もとどこおりがちだが、友達のよしみでずうずうしく長逗留していた。
ある日バイをしていると、近くで芸者3人がおみくじを引いている
「や~~うれしい!待ち人今すぐ会えるて!」
「おめでとうさん、その辺見回してみいな、ええ人いてるかもわからへんで」
「あのおっちゃんちゃうか?」
「あんなんがもってるんやで」
「ほんまやな」
「・・・いつかの?」
「おふみさんって言ったな!!」
「寅さんやねえ、たしか?!」
「そうよ」
「ねえおねえさん!占い当ったわ!うちこの人と会いたい会いたい思うてたんよ~」
「夢みたい!やあ嬉しい!」
あの小島で出会った二人は、運命的に大阪で再会した。
ふみは大阪で芸者をしていたのだ。


生駒山の宝山寺でデートする寅さんとふみ
絵馬に願い事をかく二人。
ふみが書いたのは ~弟が幸せになれますように~
実はふみには幼い頃に生き別れになった弟がいたのだ
弟は英男と言い、今24歳で大阪で働いているが、ふみには会う勇気がなかった
ふみは弟が自分の事を覚えているか、また会いたいと思ってくれているかが不安だった
そして自分が芸者であることにも、引け目を感じていた
「こんな広い世の中に、たった二人の肉親じゃねえか」
寅さんは今すぐに会いに行こうと、ふみを引っ張っていった
人事ではなかった。寅さんもまた櫻を思い続け、母親の菊を思う男だ。
山下運輸を訪ねた二人だったが、弟の英男は一月前に急病で亡くなってしまっていた。
口数が少なく、真面目で働き者の英男、会社でも皆から慕われていたという。
ふみは取り乱し、悲しみ、泣を止める事ができなかった。
寅さんは、そんなふみの代わりに、皆にお礼の挨拶をするのだった。
そして結婚を約束していた、恋人の信子。彼女からも英男の話を聞かせてもらった。
「うち、英男さんから聞いてました、お姉さんの事・・・
お母さんみたいに懐かしい人やって・・・とっても会いたがってました」

ふみは、英男もまた、姉である自分の事を大切に思っていた事を知る。
「寅さん・・・お茶飲んだら帰ろう・・・うち辛い・・・今晩大事な座敷もあるし・・・」
「なんだい、今日くらい休めねえのか?」
「休めんの。うち・・・芸者やさかいな・・・」
気丈に座敷へと向ったふみだったが、途中でぬけ、酒をのんだ。
そして深夜、寅のもとへとやってくる
「うち・・・泣きたい・・・寅さん、泣いてもええ?」
「いくらでも気の済むまで泣いたらいいんだよ、な・・・」
「寅さん・・・私ねむい~、今夜ここに泊めて~」
ずっとそばにいて欲しかったふみだったが、寅さんは眠るふみに布団を掛けると別の部屋へ。
朝、手紙を置いて一人出て行くふみ
~夕べはごめんなさい、うちがこの部屋に泊まるのが迷惑だったら、
そう言ってくれれば、タクシー拾って帰ったのに。
これからどうして生きていくか、一人で考えていきます
寅さんお幸せに。さようなら。  ふみ ~



柴又へ戻った寅さん。恋煩いはレベル5(無意識に大阪弁が出るほどの危険な状態)
何をしても、何をきいてもふみのことで頭がいっぱい。
周りの人間も今回の失恋は相当に酷いと認識している
題経寺の御前様までも寅を心配
「どうかな?寅の具合は?大阪の芸者に失恋したのがこたえたかな?」
「あら御前様、そんなことまでご存知だったんですか?」
「それぐらいの事が分からないで、題経寺の住職がつとまりますか!!ハア~ハア~ハア~」
そんな中、なんと、とらやにふみが訪ねてきた
喜ぶ寅さんだったが、ふみは結婚して、対馬でお寿司屋を開くと言いに来たのだった。
「わざわざ来る事はなかったんだよ、はがき一本出しゃ済む事じゃねえか
こんな惨めな気分にさせられてよ・・・」



長崎県、対馬
うだるような暑さの中、ふみを訪ねる寅さんがいた。
ふみは寅さんをみるや、感極まり涙をながした。



男はつらいよ~浪花の恋の寅次郎~
親の事情で生き別れた、幼き姉弟のふみと英男
ふみはそれまでかたときも忘れずに英男の幸せを思い生きてきたが、
自分の芸者家業の引け目もあり、会うことをはばかってきた
そして、英男もまた、姉のぬくもりを大切にしていた。
もしも寅さんの導きがなければ、その英男の思いさえ、ふみは知り得なかったかもしれない。


ところで
実は私も母親の顔を知らない
幼い頃に親が離婚して、父に育てられたからだ。家には母の写真もなかった。
ところが、中学生だったある日、ばったりと町で母に会った事がある
顔も知らない母だが、すれ違おうと前から来るおばさんをみて何故か
「ああ、この人お母さんだ」と思ったのだ、不思議だった。これがぬくもり?絆?
お互い立ち止まり、見ているとおばさんが
「あなた、○○ちゃんじゃない?」と私の名を言ってきた
「違います」と私は答えた。
父と母の事情は知らなかった、知ろうとも思わなかった
ただ漠然とあの場で再会を喜ぶのは違うと思った。
まあまあ、いろんな事がありますが、本人にとっては大した問題じゃなかったりします
源ちゃんもしれ~っと言ってますね
「覚えてへん。おかんワイを生んですぐ男と逃げたさかい」
私は完全に源ちゃん派だ。
ただし、幼い頃の出来事だから人格形成には多々影響はあると思う
私もちょっと人格的に問題があるので、ダメ~な大人になってしまって日々奮闘している。
その点で、ふみの弟の英男はすごい、皆に信頼される立派な人格者のようだ。尊敬しちゃう。


ふみの行動は謎に包まれている
寅さんとは、哀しい手紙を残しわかれた。
ところがとらやに会いにきたと思うと、別の人と結婚するのだと言う
また、寅さんが対馬に会いにいったら、ふみは再会を涙を流して喜ぶ。
世界でも指折りの「男はつらいよマイスター」の私の友人も
このふみの感情は把握しかねている。
したがって、私みたいな者に分かるはずがない
ただ一つ言える事は、この物語でふみの身の上に起こった悲しみは計り知れない物で
ふみにとってはそれまでの生き方をも変えざるを得ない程。
その渦中に恋しあう寅とふみ。
とても感情を正常に保つのは難しいと言う事。


今回から、満男役が我らの吉岡秀隆さんに代わりました。


それにしても、渥美清さんと松坂慶子さんは、よく石段をのぼるなあ ( ̄▽ ̄;)





男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎

男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎 [DVD]




コメント

  1. 映画評「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」

    ☆☆☆★(7点/10点満点中)
    1981年日本映画 監督・山田洋次
    ネタバレあり

  2. ハコ日記 より:

    男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎

    本日、午後9時よりNHK BSで「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」が放送されます。
    実は、この作品だけは渥美清さんが亡くなり「男はつらいよ」が終わってからもしばらくは観てませんでした。
    理由は二つ
    江戸っ子寅さんが大阪文化に馴染まないのではないかという不安、もう一つはこれを観てしまうともう他に観てない「男はつらいよ」がなくなるという寂しさです・・・

    結局は観てしまいましたが、最初の不安は全く不要でした。逆にあまりにも自然に溶け込んでいて驚いたほどです。
    おふみさん役の松坂慶子さんの…

  3. 小寅 より:

    はじめまして、コメント&貴重な情報有難う御座いました!ルームミラーに映ってるのが山田監督だとは全くの想定外でした。
    おふみさんの感情についてですが、寅が対馬のおふみさんを訪ね再開した時、一瞬おふみさんが旦那さんに寄り添う姿が印象的です。その姿を見て私はやはり寅は親しい友人止まりだったのかな・・・? と思ってしまいました。

  4. RUU より:

    小寅さん、コメントありがとうございます。実は私も友人から聞いて知った事なんです。

  5. 彰(あきら) より:

    源ちゃんはあのあと寅にお酒を奢ってあげますよね。
    寅がちょっと自分の生い立ちを気にかけてくれたのが
    嬉しかったのかもしれませんね。

    お父さんと一緒に暮らしたのは
    松岡清子ちゃん(一時期)。
    高見歌子ちゃん。
    大空小百合ちゃん。
    坪内散歩先生。
    などなどどなたも心優しき人たちばかりです。

    特に僕がこのシリーズでもっとも
    尊敬する散歩先生は母親の顔を覚えていません。

    人の人格はその人の文章にどうしょうもなく
    滲み出ると思うんです。どんなに隠しても
    滲み出ます。
    よって、RUUさん、安心してください、
    ダメ~な大人ではありません。
    全く大丈夫です(^^)

    ところで
    私の知り合いの方が先日見てきたんですが、
    なんと港区波除にある山下運輸のあの『お手洗い』
    まだ健在だそうです!
    さすがに山下運輸は引っ越してましたが。

  6. RUU より:

    彰さんコメントありがとうございます
    りりー
    歌ちゃん
    美保
    散歩先生
    うーんなるほど皆、そうとうな人物だ
    みんな頑固もんですね(^^;)

    あのお手洗いでの
    大村昆さんの芝居は
    すごく自然でしたねえ
    印象深いです


  7. 『男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎』27作目(1981・日本)ネタバレ感想。

    マドンナ = 松坂慶子

    ゲスト = 芦屋雁之助

    松坂慶子の魅力が炸裂しまくっている。
    女性として一番輝いていた時期だろう。
    何よりもその演技力に驚かされた。

    芸者をやってもよし、<とらや>を切り盛りしてもよし、派手な着物も、シンプルなブラウスも似合っている。
    これだけの様々な面を持つキャラを、一本の映画の中で違和感なく共存させられる女優はそうはいないだろう。

    今…

タイトルとURLをコピーしました