真夏の沖縄での、寅とリリーの物語。
寅さんが旅先から戻ると
リリーから手紙が届いていた
~寅さん、私の事覚えてる?
私、今病気なの、
歌を歌っている最中に血を吐いて、
この病院にかつぎこまれたの。
先生は、気の持ち方で
必ず良くなるって言うけど、
でも、生きてたって
あんまりいい事なんかないしね。
別に未練はないの。
ただ一つだけ、
もういっぺん寅さんに会いたかった、
寅さんの面白い冗談を聞きたかった、
それだけが心残りよ~
リリーは病床で、最後に寅さんに会いたかったと言うのだ
寅は病院の場所も聞かずに店を飛び出す
ところが病院は沖縄。
慌てて寅を引きとめ、皆で対策を協議。
・鉄道で鹿児島まで行き、そこから船・・・・およそ3日かかる
・東京から船・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・およそ3日かかり、今日出航かも不明
・羽田から飛行機・・・・・・・・・・・・・・・・・・・およそ3時間。
結論として飛行機しかないという事になったが
寅さんは飛行機が怖い。
絶対に乗らないとダダをこねる寅さんを皆で説得。
御前様までが飛行機の安全性を説明し、何とか羽田空港へ
ところが寅さんは、いざ飛行機を見ると
「プロペラが無い」と言う理由で搭乗を拒否。
博が必死に説得しても、柱にしがみついて離れない
そこに通りかかったキャビンアテンダントのお姉さんについていき
ようやく沖縄へと向った。
リリーの病室
廊下でバタバタと走ってくる寅さんの声
「リリー!、リリー!」
「すいません、看護婦さん、松岡リリーはまだ生きてますか?
生きてますか!!あ~よかった。松岡リリーどこにいますか?」
「リリー・・・どうしてお前そんなにしわくちゃになっちまって・・・
それじゃ道ですれ違ったってわかんねえじゃねえか・・・
寅だよ、俺の事もわかんねえのか、かわいそうに・・・」
「おんにゃあらんど、リリーさんはあっちですよ」
寅さんは違うベットのおばあさんをリリーと間違える
「リリー!なんだい、お前ここにいたのか。
お前、昔と一つもかわらねえ。安心したよ。」
「寅さん・・・来てくれたのね。私、うれしい・・・」
「よしよし、寂しかったんだろう、もう俺がついてるから大丈夫だ。
泣くな、おい、泣くんじゃないよ、みっともないから、な。」
リリーは寅さんが駆けつけてくれた事や、とらやの皆の気持が
本当に嬉しかった。そして病状も寅さんの献身的な看護によって快方に向う。
病院の食事やおばちゃん特製の佃煮を食べさせてあげる寅さん
「あ~あ、お前も・・・沖縄まで来て、病気してよ・・・
どんな苦労したんだ?ん?」
「フフフ・・・」
それから数日後、リリーは退院し
二人は沖縄の海岸の町、本部で小さな部屋を借り、
そこで病気療養する事にした。寅さんとリリーの半同棲生活だ。 ←いかん!by御前様
リリーは穏やかな環境の下、寅さんと二人の幸せに、ぐんぐん快復していった。
「寅さん、私、一度聞きたかったんだけど・・・
あんた、今までに誰かと所帯持った事ある?」
「そういう過去は触れない方がいいんじゃねえか、お互いに色々あるからさ」
「私はあるよ、所帯持ったこと」
「いやオレ知ってるよ、うん」
「寅さん、どうなのさ」
「いいじゃないの、今ぁ~」
「白状したっていいだろ」
「要するにいっつも振られっぱなしって事だよ。そんな事まで俺に言わせんのかバカ。」
「じゃあ、こうやって女と差し向かいでご飯食べるの初めてなの?」
「そうそう、初めて初めて。ああっ薬飲んで寝ろよ、な。」
リリーはこの時、寅次郎との生活を、二人一緒の人生を真剣に考えていたのだ。
だが、リリーが快復すると、しだいに寅さんはブラブラと遊びだしてしまう
暑さにまいって仕事どころではなく、涼しいところで休んだり
若い女性の居る水族館で過ごしたりしていた
そんな寅をリリーはあきれて見ていた
リリーの方も貯金が残り少なくなり、仕事をしなければならなくなる
大家の息子のたかしと、車で繁華街で仕事をさがす
それを聞いた寅さんも穏やかではなかった
二人はお互いにやきもちを妬く。
そしてそれは決定的なケンカにつながってしまうのだった。
「あたし、明日っから働く事にした。」
「働くって何すんだ?」
「決まってるじゃない、歌うたうのよ」
「バカだねお前、そんな事したら元も子もなくなっちゃうぞぉ
ブラブラしてればいいんだよ、涼しくなるまで、な。」
「もうお金ないの、どうやって食べてくの?」
「俺が何とかしてやるよ」
「嫌だね。男に食わしてもらうなんて、私まっぴら。」
「水臭い事言うなよ、お前と俺の仲じゃねえか」
「でも・・・夫婦じゃないだろ・・・あんたと私が夫婦だったら別よ。・・・でも違うでしょう」
それはリリーの愛の告白であり、プロポーズの言葉であった。
「馬鹿だなお前、お互いに所帯なんか持つ柄かよ~
真面目な顔して変な事言うなよお前~」
「あんた、女の気持なんか分かんないのね・・・」
その後、大喧嘩になり、翌朝リリーは置手紙を残して東京に帰ってしまった。
リリーにおいてけぼりを食らった寅さんは
三日三晩のまず食わずでフラフラで柴又に戻る
帝釈天参道を見てついに力尽き行き倒れとなるが
とらやにかつぎ込まれ、
オレンジジュース、うな重、天婦羅そば、上寿司で何とか快復。
その夜、沖縄でのリリーとの出来事を話すと、寅さんは皆から大説教を受ける
桜・・・・・・・・・・リリーさんの愛の告白をはぐらかした!
おばちゃん・・・女にそこまで言わせておきながら!
おいちゃん・・・どこの世界にお前にプロポーズする女がいるんだ!
博・・・・・・・・・草の根を分けてでもリリーさんを探しだし、愛の告白をするべきだ!
とらやの皆さん、寅さんの色恋沙汰にいつになくポジティブ(^^;)
そんな中、リリーが心配をかけたと、とらやに挨拶にやってくる
沖縄での思い出を皆に聞かせる寅とリリー
いつしかリリーは沖縄の人が唄っていた唄を皆に唄ってあげている
その唄は”愛する人と一緒になれない悲しみ”を歌った唄であった・・・
「私・・・幸せだった、あの時・・・」
「リリー・・・俺と所帯をもつか・・・」
夢見心地の寅さんは、うわ言のようにリリーにプロポーズ・・・
ハッと我に返る寅さん
「俺、今、何か言ったかな・・・」
「ハハハ、いやあねえ寅さん変な冗談言って、みんな真に受けるわよ」
「ハハハ、そうだよそうだよ、ここは堅気の家だからな、こりゃまずかったよ」
「私達・・・夢みてたのよ、きっと・・・ほら、あんまり暑いからさ」
「そーだよ、夢だ、夢だよ、うん」
お互いに夢だったと自分に言って聞かせる、寅とリリーであった。
男はつらいよ~寅次郎ハイビスカスの花~
自分に死がせまり、最後に寅次郎に会いたいと願ったリリー
すぐさま駆けつけ、最大限に自分ができる事をする寅次郎
この二人が、お互いに愛し、愛されている事がよく分かる作品だ。
そして、それでも何故に、二人が結ばれないのかも、よく分かる作品です。
・・・リリーと寅さんはこの先、幾度となく旅先で再会したり
寅さんがリリーの所にころがりこんだりする事になります。
リリーの居場所は、いつも親友の櫻に手紙で知らせているのでしょう
そんな事を僕等に想像させてくれるシーンで映画が締めくくられます
~上州の峠道、旅の途中、バスを待つ寅さん
そこに降り立つサングラスをかけた派手な女・・・
「・・・どこかでお目にかかったお顔ですが、姉さん、どこのどなたです?」
「以前お兄さんにお世話になった女ですよ」
「はて・・・こんないい女をお世話した覚えはございませんが」
「ございませんか、この薄情者!」
「ハハハ、何してんだお前、こんなとこで」
「商売だよ~お兄さんこそ何してるのさ?こんなとこで」
「俺はおめえ、リリーの夢を見てたのよ」
ところで
櫻さんが幼い頃、江戸川で蓬をつんで帰っておばちゃんにお小遣いを貰った
なんて思い出話をします。・・・かわいかっただろな~~~(*⌒∇⌒*)
本当は櫻さんも駆けつけたかったんだろうな~親友のリリーのいる病院へ
櫻さんは「飛行機に乗った事がない」と発言するが
12作「私の寅さん」で九州に家族旅行に行った時に乗ってます
水族館でイルカの水槽を洗う従業員
水のない水槽に横たわるイルカをみた寅さんは
慌てて水をかけようとします
「大丈夫か!魚そんなトコおっぽり出して!干物になっちゃうぞ!!!」
この感覚、最高です
備後屋「暑いね」
寅さん「お前でも暑いか?」
この感覚、最高です
生きてるあいだは夢だ。 by セキスピア
満男よヤクルトの帽子じゃなく、ベイスターズの帽子をかぶれ ( ̄^ ̄メ)
とらやに出前にきた蕎麦屋、阪神のじゃなく、ベイスターズの帽子をかぶれ ( ̄^ ̄メ)
コメント
それにしてもたがみ病院の病室のおばあちゃんんは
ウチナーグチでいい味だしてましたよね。
「おんにゃあ、あらんど。
リリーさんはあっちですよ」
「くさなやー、おにんがわかさごべんじゃちろなァ、
あいえな、あっさみよい」
(私しゃいいけど、若い者には体に悪いよ)(^^;)
しかし、どうしても気になるのは、
なぜ八百満のおかみさんが
わざわざ沖縄で入院を…。
まあもっとも、タコ社長の奥さんも
タコ社長に黙って九州に行商に行ったり、
龍野の旅館で仲居さんやってますが…(^^;)
リリーさんが誰だか覚えてないで
お見舞いの封筒を渡した御前様。
さすが太っ腹、ああいうところ好きですね。
「ハイビスカスの花」は僕が寅さんを映画館で見た
最初の作品です。青春の思い出がたっぷり詰まった
映画です。
私も友人が入院して
お見舞いに行ったときにやりました
わざと見知らぬ向かいのベットの人に・・・
友人は「男はつらいよ」を見たことがなく
私が利用してしまった
その見知らぬ人も
ただただ驚くばかりで・・・
結果はドン引きでした~~~(TT)
映画評「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」
☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1980年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり
「男はつらいよ」シリーズの特徴としてエンディング・シーンの素晴らしさがありますね!
「ハイビスカスの花」も峠のバス停でリリーと再開し一緒に去っていくシーンで終わることで凄く後味の良い作品になっていると思います。
残念ながらこのバス停(跡)は今年の春、強風で吹き飛ばされてしまったそうです。
あのラストシーンの青空に
何度も助けられました
ああ、バス停行きたかった(TT)