つねさん語録 №16

本名:車つね。
寅さんの叔母。我らがくるまやのおばちゃん。
キップはいいが、涙もろくて心配性。超がつくほど現実主義の彼女は
柴又の涙と笑いのポイントゲッター。

つねさん語録 №16

「男はつらいよ~葛飾立志篇~」 (16)

「あの~、こちらに車の寅次郎さんて人いらっしゃいませんでしょうか?」
「今ちょっといないんだけど」
「それじゃあ、私の事お兄さんから何か聞いてませんか?
私、最上順子っていいます・・・」


とらやに、最上順子という女学生が寅さんを尋ねてきた
寅さんの初恋の人”お雪”の一人娘だ。
寅さんは16年間、毎年欠かさずお雪さんに手紙を書いていて
その中に”娘さんの学費の足しに”と500円を入れていたのだ
母一人、子一人でお雪から何も聞いていない順子は
その手紙の主が父親ではないかと思い尋ねてきたのだった。

がっかりしていると、ちょうどそこに、旅先から寅さんが帰ってきた
寅さんは順子に気付くと、はっとしていた。
初恋の人”お雪”の記憶がよみがえり、やさしい笑顔で順子に語りかけた

「ああ・・・お雪さんだ・・・」
「お父さんなのね・・・」
「うん・・・」  ← うんじゃない、うんじゃ ( ̄□ ̄;)

順子はこの時、夢にまでみたお父さんとついに逢えたと涙ぐんだ
一方、とらやにとっては、ついに一番恐れていた事が現実となったのだ

「今なんて言ったの?お父さんって言ったの?」
「・・・今この人が言った”雪”は私の母なんです」
「・・・」
「お、おれは知らないな・・・おれは・・」
「はあああ・・・・何て事を・・・」
おばちゃんは目の前の現実を受け止める事が出来ずに
ガクガクと震えだし、おいちゃんにすがりついていた
「落ち着け!みんな落ち着け!」
「落ち着きなよ、落ち着き・・・」
「ねえお兄ちゃん、正直にありのままを言うのよ、
お雪さんて人を知ったのはいつなの?」

「ええ?そりゃお前・・・16、7年・・・」
「お嬢ちゃん、いくつだ?」
「・・・17です」
「間違いない!」
「お前覚えがあんだろ!!」
「覚えって何の?」

「ぅ悪い男だよ!とぼけたりして!!!(怒)」

「ちょっとおばちゃん黙っててよ!
ねえお兄ちゃん、お兄ちゃんとそのお雪さんの間柄っていうのは
子供が出来てもおかしくない間柄だったの?」

「間柄だったのか?」 ← 寅さんもパニクってます
「あああ!!じれったいもう!!」 ← 完全に寅を女の敵扱いのおばちゃん
「お前、お雪さんとできてたんだろ!!」
「馬鹿野郎!!何て事言うんだい!!俺はお雪さんにな
指一本だって触れちゃいねえや!!」

「指一本触れねえで何で子供ができるんだ!!」
「だからおかしいって言ってるんだよ!!
俺は忘れもしねえ、お雪さんはな、いつだって赤ん坊背中に負ぶって
手を真っ赤にして働いてた人なんだぞ!!!」

「赤ん坊がいたの?」
「そうだよ、かわいい女の子が一人いたよ」
「何でそれを早く言わないの!じゃその赤ん坊がこの子よ」
「・・・あの時の赤ん坊かあ、どおりでお雪さんそっくりだあ」
「どうもすいませんでした・・・」
「あやまる事なんかないのに」 ← おばちゃん今度は同情、涙ぐむ
「おじさん、母は去年、死にました・・・」
「・・・」

皆は、この順子に何か元気付けてあげたいと、強く引きとめ
豪華なご馳走を出前でとって、もてなしてあげるのだった。
「もしもし、ウナギの上をねえ・・・」 

「あたしウナギ嫌いだよ!」

「お前の事なんて聞いてない!」

「櫻ちゃんも嫌いよ!!」

「うるさい!!」 ← おいちゃん、ウナギは寅さん走って買いに行ったけど?


”お雪さん”とは
寅次郎が若かりし頃、テキヤ家業も駆け出しで
何をしてもうまくいかず、一文無しで、腹を空かせてさまよっていた時
とある食堂で腕時計とカバンを差し出して
「これで何か食わせてくれ!」と頼んだその店主の女性だ、そのときお雪は
「いいんですよ、困ったときはお互いですからね」
と山盛りの白飯と、豚汁をそっと差し出したのだ
寅次郎には、お雪が観音様に見えたのだという
寅さんは、以来16年間毎年手紙を出し続けたという、特別な、初恋の人なのだ


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おばちゃんはこの時ほど動揺したことは無い
震えだすは、怒鳴り散らすは、
順子に同情して涙ぐむは・・・
本当に感情の激しい人だ

しかしおばちゃん、柴又門前町に店を並べてて
そんなに大声で
”ウナギ嫌い”を主張するのはどうなんだろう (; ̄ー ̄A
川千家のおっちゃんに聞こえるぞ
しかも櫻もまきぞいだ 




コメント

  1. 彰(あきら) より:

    少なくともおいちゃんが電話していたうなぎ屋さんには
    おばちゃんの声丸聞こえですよね。 おいおい…ゞ(^^;)

    柴又で「団子嫌い」
    柴又で「てんぷら嫌い」
    柴又で「うなぎ嫌い」はタブーです。
    でもよく考えたら全部寅の嫌いなものばかり(^^;)

    ところで、
    おばちゃん、第14作「子守唄」の時もそうなんですけど、
    物凄くワナワナおののいている割には、どこかで
    寅にそんな子供がいたらなあ…なんて気持ちが潜んでいる気が
    するんです。
    「ああ!”じれったい!」という言葉にその気持ち(期待感)が
    見え隠れしているような…。

    なんせ子供には罪は有りませんから。
    そこがおばちゃんの救われるところなんだと思います(^^)

    でも今回もやっぱり寅はいい意味では潔白、
    ある意味では甲斐性無し…。
    人道的にはとてもほっとしてるし、その夜に茶の間で
    ギャグを言って寅のことを茶化してもいるけれど…。

    おばちゃんが最後につぶやいた
    「あんな可愛い孫がいたらねえ…」は本心ですよね。

    寅は寅でそんな老夫婦を見て傷ついていましたね…。

  2. RUU より:

    彰(あきら)さん
    コメントありがとうございます

    第一作で満男が生まれたときも
    満男にべったりでしたね
    珍しく店ほっぽらかして
    御前様のところに行ったりして・・・

    そうかあ
    「じれったい」
    の真意はそこなんですね
    さすがの見方です 

    お雪さんが
    最初に出会った男性が
    あの騙した男ではなく
    寅さんだったら
    2人とも違う人生が・・・
    ってないかそれは (^_^)

  3. 小寅 より:

    おばちゃんがつぶやいた
    「あんな可愛い孫がいたらねえ…」
    何気ない一言ですが凄く重みがあります

    その夜、お雪さんの想いで話に出てくる
    山盛りの飯、温かい豚汁とお新香・・・
    妙にリアルなんです。いい話でした!
    「一杯のかけそば」の感動を上回りますね

    でも・・・この感動を
    「なんたって傷つきやすい年頃だからねえ・・・」
    「今頃汽車の中で泣いてんじゃないかい?」
    おばちゃんは一撃で破壊するのでした♪

    RUUさん
    寅が先にお雪さんに出会ったとしたら・・・
    やっぱり変わらなかったでしょうね~(笑)

  4. RUU より:

    小寅さん
    コメントありがとうございます

    「でも、よかったんじゃない?
    結局違ってた訳だから」
    「ああそうだ、あたし間違えちゃったあ」
    これで寅さんキレちゃいましたね (^_^)

    飛び出して、
    その足で寒河江に向かい
    お雪さんの墓におまいり
    ここが寅さんの凄いところですよね

    そこで学問に目覚めるので
    ありました (^_^)

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