「”幸せは富で得られるものではない”だが、
それを口にするのは常に金持ちだけだ。
そのへんの問題を、あまり頭のよくない寅と
一緒に考えてみようではないか」
山田洋次監督の演出の言葉だ。
この作品では珍しく、とらやに大事件が起こります。
「こんにちは、何してるの?」
「うん、景色見てんだ」
「不思議なとこねえ、何ていうとこ、ここ?」
「北海道ってとこ」
「それぐらい分かってるわよ、ねえ、もしよかったら
乗って行きません?送っていくわよ」
「娘さん、あんた嫁入り前だろ、若い娘がな、
旅の行きずりの男をそんな気安く誘っちゃいけないよ。
もし悪い男だったらどうするんだ、そうだろ?」
「おじさん変わってるのねえ」
寅さんと、入江ひとみとの出会いだ。
数日後、寅さんの予言は的中、ひとみは悪い男につかまり、車の中で暴行を受ける
その現場を偶然居合わせた寅さん
「なんだい兄さん、女口説くんだったらもう少しうまくやったらどうだい」
「なにお!このヤロウ!!ヤァーーー!!」
男は寅に飛び掛るが、ズボンがずり落ちて足がもつれて転ぶ
挙句にチャックに○○○を挟んでしまった!しかも出血!!
これは痛い!!女性には分からない!!とりあえず謝りなさい、ひとみ!!
ブザマに逃げていった
「な、言っただろ?女の一人旅は危ねえから気をつけろって」
その夜二人は支笏湖の畔の旅館に泊まろうとして
主人に満室だと断わられるが、この主人がなんとさっきの痴漢男だった。
寅とひとみは警察に突き出すと脅し、まんまと低料金で長逗留
・・・もっと搾り取ってやれ!!性犯罪を許すな!!
ひとみの家は田園調布の裕福な家庭、親が決めた家柄のよい相手、小柳邦男との結婚話が進んでいた。
しかし彼女はその結婚には気が重かった。それで気晴らしに一人旅をしていたのだ
女性なら多かれ少なかれ結婚前に不安になるものだが、ひとみは根本的な疑問を感じていた。
「ひとみちゃん、バチが当たるよ、世の中にはな、病気のおとっつあんの為に
親子ほど年の離れた男の嫁になる娘もいるんだよ」
寅はひとみに、およねと、もさくの哀しい愛の物語を言って聞かせる
「およねちゃん、おめえ何であんな奴の所へいくだ!」
「許して、もさくさん・・・たとえこの体はあの男の物となったとしても
心はいつまでも、もさくさん、あなたの物よ・・・」
「およねちゃーーーん!!」
・・・およねは、一生もさくの事だけを思い続けて暮らした。
”幸せなはずのひとみが、気が乗らないなどとは罰当たりだ”
そう言って聞かせたい寅だったのだが、この話はまるっきり逆の効果を生んだ
「およねさんって幸せだな・・・それほど好きな人がいて・・・」
この後にひとみが結婚式で起こす”大事件”は、半分寅さんの責任でもあるのだ。
小柳邦男、入江ひとみ、結婚式当日
ひとみはお色直しの最中、ウエディングドレスのままで披露宴会場を逃げ出してしまう
タクシーに飛び乗り、葛飾柴又のとらやへ向った。
「寅さんあたし、逃げてきちゃったの・・・お願い、寅さん助けて」
「大丈夫、大丈夫だよ、俺が来たからには、誰にも指一本触れさせやしねえよ」
ひとみは当分の間、とらやでかくまう事にする
寅さんがひとみの為に買ってきた、キャミと超ミニスカートは結局一度も着て貰えなかった
小柳邦男がとらやに会いに来た。
「どうしてるかなと思って・・・元気?」
「ありがとう・・・私は元気。ごめんね本当に・・・」
寅さんが邦男を送り、元気付ける為、二人で飲みに行った
「あの結婚式以来な、毎日毎日あんたの事考えて暮らしてるらしいぞ
まあいくらあいつが好でも、ひとみちゃんの方が逃げ出したい位嫌いなんだから仕方無いけど
ただ一言ね『あんたの気持は嬉しいわ』その辺の事言ってやんなよ、その言葉だけで
あいつは幸せになれるんだから、恋をする男の気持ってのは、そんなもんなんだよ」
「私、とっても大事な事聞いた」
「勉強になったでしょ?」
寅さんは邦男と話し、人生の晴れ舞台に重大な不幸を背負ってしまった彼に同情し
また、恋をする男の気持を感じ取った。それもそのはず
小柳邦男は誰が見ても非の打ち所のない位の好青年、そして家柄もよく
親の会社も約束された完璧な男。ただ、ひとみとの結婚の過程で
一番大切な彼女の気持をつかむ事が出来ていなかっただけなのだ
今、彼は後悔し、親の会社も辞め、家も出て、自動車修理工の仕事に就き
小さなアパートで、ひとみの事だけを考えながら暮らしていたのだ。
ひとみもまた親元を離れ、英会話の家庭教師をしてひとり自活して暮らしていくつもりでいた
またとらやにやって来た邦男。寅さんに居留守を使われる
「ひとーみちゃーん、こないだの青年がまた来たよ。うん、うん、そう言っとく
会わないって。帰ってくれって。」
「悪い事は言わないよ、お前顔もいいし、背だって高いし、うちだって金持ちなんだろ?」
「そういう言い方は、抵抗を感じるなあ!!」
「抵抗?ああ、お前さしずめインテリだな?それじゃ余計女にもてないよ、ダメだ諦めな」
寅さんはこの前は彼に同情もしたが、スパっと諦めない所が気に入らないのだろう
邦男を追い返そうとするが、外からひとみが帰ってき来てしまった
「あら?ひとみちゃん2階に居たんじゃないの?不思議だなあ」 ← あの2階は不思議だらけ、ありうる
「邦男さんお願い・・・もう来ないで・・・」
「ほらな、俺の言ったとおりだろ、しゃあない、どっか行って冷たいビール飲むか?」
目を白黒させてる櫻、「おばちゃん、一体何があったの?」
「寅が悪いんだよ!知らないよ!!」 ← でた、おばちゃん二枚目の味方
ひとみは邦男の人生への責任を感じていた
それは一方で邦男の事を真剣に考えるという事
そして自分の気持も確かめる為、邦男のアパートに向った
「もう二度と会えないと思っていたけど・・・一つだけ後悔している事があってね
これだけはどうしても言いたくて・・・」
「どんなこと?」
「つまり・・・一度も言った事無かったろ?君の事を好きだって・・・」
「ねえ・・・キスして・・・」
「ネギ食べちゃった。うふふ」
ひとみの心からもう迷いは消えていた
「あのね寅さん、私やっぱり結婚する!いいでしょ!」
「・・・誰と結婚すんだ?」
「兄さんじゃ・・ないと思いますけど・・・」
「そうだよね、誰でもいいと思ってたんだ」
二人はもう一度、結婚式を挙げた。柴又の川千屋で、寅と櫻を仲人にし
これから幸せを築いて行くであろうという素晴らしい式であった。
男はつらいよ~翔んでる寅次郎
私はこの作品は、シリーズの中でもコメディ色の強い物と思っていた
それは痴漢男とかの場面で、くすぐりが目立つ事や
キャスティングもそう感じさせる
(布施彰さんや桃井かおりさんって二枚目なのに不思議とコメディ感がありますね)
ところがそれは、とんでもない間違いだった
寅の話のおよねさんのように、相手の事を真剣に愛して生きて行きたい
そうして本当の幸せを求め、悩んだ末に形式をやぶり、行動を起こしたひとみ
そして、その事の大切さを誰よりも思い知らされた男、小柳邦男
彼もまた自分を見つめ直し、何もかも捨ててひとみの事だけを思う。
二人の物語は、本当に素晴らしいラブストーリーだった。
ところで
寅さん、出世払いでタコ社長に、ひとみの英語の家庭教師のチラシ作らせてたけど
「寅次郎春の夢」の高井めぐみに言いつけるよ。
ひとみの母親がとらやに来てひとみの説得を諦めて帰る場面
おいちゃん、おばちゃん、櫻に長々挨拶をして
おばちゃん達も変なざます言葉でぺこぺこしてる時
是非、その後ろ~の方の寅さんの動きに注目して下さい
超面白いですよ
いくら形式にとらわれない披露宴といっても
新婦の母親の隣に源公ってのはどうなんだろう?・・・ゞ( ̄∇ ̄;)
源公といえば、御前様に鐘の中に入れられて、鐘つかれてました・・・( ̄ロ ̄lll)
男はつらいよ 翔んでる寅次郎
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コメント
映画評「男はつらいよ 翔んでる寅次郎」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1979年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり
今回は博の名言がありますよね。
「ふられた後で気がつくんじゃないか…。
やっぱり恋をしていたんだと」
源ちゃんに仏教の修行が文字通り命がけだ
ということを教えられた御前様(^^;)と
「♪やまざ~くらああ~ばなあああ!」
の御前様このコントラスト大好きです。
邦男さんの妹の京子ちゃん(戸川京子さん)は
ほんと初々しかったです。
後に加納作次郎の仕事場に工場のゆかりちゃんたちと
一緒に見学に入ってましたよね。
今、もし生きておられたら感性の豊かな
素晴らしい女優さんに
なっていらっしゃる気がしています。
タコ社長、結婚当日見合いの時と違う人が現われても
それでも結婚した。
理由:仲人に借金があったから。
すげええ理由!!参ったあ、1本!
ひとみさん、ママの知っている「幸せ」とは違う
「幸せ」を自分の力で見つけたんですね。
よかった…。うんうん(--)
さて!まあ!こんなところで!
『うん』がついたというところで
メデタシメデタシ!
義理の妹の結婚式で
布施彰の「とまり木」
歌ってあげようと
ひそかに画策してたのですが
歌の依頼がありませんでした
|||(-_-;)||||||
私は自他共に認める歌自慢
てっきり依頼されると思ってたのです
案外僕、うた、そうでもないんだ・・・
と思い、へこみました