寅さんが、甥の満男の初恋を見つめる物語
寅さんの甥、櫻の息子の満男は、
浪人で大学受験に備えて予備校に通う毎日だ。
だが満男は、このところ勉強が手につかないでいた
高校の後輩で、同じ吹奏楽部だった
及川泉と言う女の子に恋をしているからだ。
泉ちゃんは、両親が別居して、
スナックで働く母と名古屋で暮らしているが、
その母ともすれ違いの生活。
そんな寂しさを満男に手紙を書く事で紛らわしていた。
満男は泉への心配と、恋心でますます勉強どころではなくなっていた
櫻と博も、イライラして不安定な満男を見かねていた。
そんな時に、あの人が帰ってきます。 ← しかもめずらしく矢切の渡しで
なんと、櫻と博は寅さんに満男の相談相手になって欲しいと頼む。
博さん独立騒動を思い出せ!大事な事は寅に相談しちゃダメ。
案の定、寅さんは満男を居酒屋に連れて行く・・・
「さあ、満男、お前も一人前だ。一杯行こう」
「いただきます。ブッ、グフ、ウイ~」
「何だおい~、酒の飲み方から教えなきゃなんねえのか、いいか?
まず、片手に杯を持つ、酒の香りを嗅ぐ、
な?酒の臭いが鼻の芯にず~んとしみこんだ頃おもむろに一口飲む、
さあ、お酒が入っていきますよと言う事を五臓六腑に知らせてやるんだ
そこで、ここに出ているこのつきだし、これを舌の上にチョコッと乗せる
これで酒の味がぐ~んと良くなる。それからチビリ、チビリ、
だんだん酒の酔いが体に染透ってくる。それを何だお前、駆けっこして来た奴が
サイダー飲むみたいにぐ~と飲んで、胃袋が驚くよそれじゃ。わかったか?」
「さて満男、何でも聞くか。親にも言えない悩み事があるんだろ、
なんだよ、思ってる事スッと言え、伯父さん何聞いたって驚かないから」
「・・・」
「あれ~!?」
「な、何?」
「お前、まさか・・・」
「そんなんじゃないよ!」
「赤くなりやがったこいつ。誰だ?近所の娘か?それとも高校の同級生か?」
「違うよ、下級生だよ・・・あっ言っちゃった。」
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:
「恋をしているのか・・・お前は・・・
こないだまでガキだと思っていたのに、恋をする年になったか・・・」
「違うよ伯父さん、俺のは恋なんかじゃないよ、だって恋って言うのは
美しい人を美しく思う気持のことだろ?でも俺のはちっとも美しくなんかないよ!
不潔なんだよ、だって俺、ふと気付くと、あの娘の、唇とか、胸とか、
そんな事ばっかり考えてんだよ、俺に女の人を愛する資格なんか・・ないよ・・・」
「お前は正直だな、偉い!、さすが博の息子だ」
「俺のどこが偉いんだよ!調子のいい事言うなよ!」
「まあ聞け、博がいつか俺にこう言ってくれたぞ、
自分を醜いと知った人間は、決してもう醜くねえって、
な、考えてみろ?田舎から出てきて、タコの経営する印刷工場で
職工として働くお前の親父が、3年間、櫻に恋をして、何を悩んでいたか。
今のお前と変わらないと思うぞ。そんな親父をお前、不潔だと思うか?」
「・・・やっぱり、伯父さんは苦労してんだなあ」
「少し、気持楽になったろ?それじゃあ伯父さんの色懺悔をすこし聞かせますか?」
「お願いします」
・・・このシーンは長年見続けてきたファンにとっては本当に嬉しい場面だった
だけど満男、色懺悔は聞くのよせ!朝になってしまうぞ!!
二人はべろんべろんでくるまやに戻ると
博が激怒、満男はひっぱたかれ、酒を飲ました寅さんも皆から散々非難される。
翌朝、寅さんは旅に出て行ってしまい
満男も置手紙を残して、バイクで泉に会いに行ってしまうのだった。
バイクで名古屋の泉の家に行くと、泉は今、佐賀の叔母の家で暮らしていると言う。
満男はなんと、佐賀県までバイクを走らせる
やっと泉に会えた満男、泉もどんなに嬉しかったことだろう
「どうして・・・お母さんにここに居る事聞いたの?、それでこのバイクで?」
「寂しいって手紙に書いてあったろ・・・だから心配になって飛ばして来た訳・・・」
「信じられない・・・」
二人は日が暮れるまで川で話をした。
その夜、満男は旅館を探したが、あいにく満室。ところが親切な人が相部屋をしてくれた
「おじゃまします・・・」
「兄ちゃんは、学生さんかい?」
「いえ、浪人です。」
「おお浪人か、俺の甥っ子も浪人でね、コイツがまあどうしょうもない
ろくなもんじゃねえ・・・満男!!」
「伯父さん!!」
「何やってんだお前こんなとこで!!」
「伯父さ~ん!!」
なんと相部屋の人は寅さんだった。
満男に頼まれて、泉の叔母の家まで付き添う寅さんは
そこのおじいさんに気に入られ、満男と泊めてもらうことになった。
だが、教師をしている泉の叔父は頭の固い人で、二人を快く思ってはいなかった。
翌日、満男と泉は一日デート、泉の悩み事をじっくり聞いてあげたりして
すっかり帰りが遅くなってしまう。しかもバイクで二人乗りをした事が叔父にばれて、
叔父は二人を激怒。たっぷりとしぼられる泉、嫌味を言われる満男。
そんな事で、せっかく来たのに、別れぎわ気まずい思いをしてしまう二人・・・
満男の、別れ際の愛の告白も、ぶざまな物になってしまう。
その事を聞いた寅さんは、翌朝、叔父に謝りに行く。
「甥の満男が大変ご迷惑をお掛けしたそうで、申し訳ございません」
「満男君には少し、キツイ言い方に聞こえたかもしれません、しかし、
泉はうちの娘じゃのうて、預かった子ですたい。こっちには責任ちゅう物もあります。
正直言うて、保護者の私達の了解もなく、バイクで突然来られたりするのは、迷惑です。
どうか、二度とこがん事がおこらんよう、ご指導下さい。」
「先生、わたくしのような出来損ないがこんな事を言うと笑われるかも知れませんが
わたくしは甥の満男は間違った事をしていないと思います。
慣れない土地へ来て、寂しい思いをしているお嬢さんを慰めようと
両親にも内緒で、遙々オートバイでやってきた満男を
わたくしはむしろ、良くやったと褒めてやりたいと思います」
・・・泉の学校に立ち寄る寅さん
「満男が迷惑かけたらしいな、勘弁してくれよ」
「何とも思ってない、満男さんにあったら言っといて下さい、あたしちっとも怒ってないって
・・・おじちゃまも、行っちゃうの?、寂しくなる。」
「それはしょうがないよ、会うは別れの初めと言ってね、でも俺は旅人だから
また顔見に来るよ、な、ハハハハ俺が顔見に来てもしょうがねえか?!
あのなあ、早いとここの土地の言葉を覚えて、いい友達を作んな、よかか?」
「よか!」
正月、満男は家に友達をつれてくる
ところが、階段の上にはなんと泉の姿があった
正月を父親と過ごすので遊びにきたのだ
慌てて自分が呼んだ友達を追い返す満男だった。
男はつらいよ~ぼくの伯父さん~
寅さんは、自分の息子の事のように、満男の初恋を応援し、
泉をあたたかいまなざしで励ます。
初恋の人「お雪」をいつまでも大切に思う寅さんにとっては
満男の初恋は、自分にとっても素晴らしい出来事なのだ。
ところで、
満男は、亡き寅次郎の父親の車平造にそっくりだと言う事が判明しました。
満男よ、見ず知らずの人に、バイクで転倒したのを助けてもらって、
その上、修理や食事までご馳走になっておいて・・・
人から親切にされた時は、ちゃんとお礼をするのが礼儀、
あんな風に逃げ出すなんてもってのほかだよ。 ( ̄m ̄〃)ぷぷっ!
泉ちゃんの叔父さんよ(怒)、
「無断でいきなり来られるのは迷惑です」って
そのことに関しては、満男より泉ちゃんの方が数段上だよ
でも博と櫻は心が広いから歓迎してるけど
岡部とよっちんには、相当迷惑かけてんだよ。
ああ、僕もエジソンバンドがあればもっとましなレビュー文が書けるのに・・・
コメント
泉ちゃんのアポの取らなさは相当筋金が入っていますよね。
この癖は最後の第48作のクライマックスまで延々と続きます。
岡部とよっちんはもう涙も枯れ果てたって
感じでしょうね…(^^;)
それにしてもあの夜の笹野さんのあの目、あの赤い口紅…。
ああああ、忘れたいのに未だに忘れられない~!
あの下田の長八、結婚相談室のコンちゃん、
どんな役でも完璧にこなされます。
笹野さんの底力って凄い。
しかしあの泉ちゃんの佐賀のおじさんは悲しい…。
彼のお父さんが無類のお人好しなぶん反面教師に
してしまったのかもしれませんね。
首尾一貫して『正しいこと』を言っているのですが
そのことにしがみついて肝心の魂が干乾びて小さくなっている。
腹が立つというよりも、やっぱり悲しいですね。
彰(あきら)さん
佐賀のおじいさんの登場シーンが
いつ思い出しても笑えます
言葉使いが超面白い「あんたがたどっからかんた!」(^^)
「ぼくの伯父さん」以降は見ていてとても楽ですね
多分、僕等観客の気持を
寅さんに関しては満男が
満男に関しては寅さんが
それぞれ代弁してくれるからでしょうね
この作品、やはり何といっても笹野さんのモーホー姿ですね!大型バイクを颯爽と乗りこなしていて「カッコいいな~」と感心していた矢先の出来事で私もビックリしました(笑)
佐賀の嫌味なおじさんとは違いおばさんは魅力的でしたね♪
あの口紅をおとして
ホーローに紅が付くところが
細かい!!
ね満男さん・・・
さすがミクロの芝居こと笹野高史さんです
映画評「男はつらいよ ぼくの伯父さん」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1989年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり
男はつらいよ ぼくの伯父さん(男はつらいよ42) #720
1989年 日本 108分 オープニングはタイトルのように、満男が語る寅さんをバックに電車の中でおじいさん役のイッセー尾形と揉める寅さんからスタート。今回から、ゴクミ4部作の始まり、満男の恋が主体になってくる。これには賛否両論あるようだが、寅さんシリーズで若手俳優..